クレイトスはお馴染み、ギリシャ神話をベースにしたバイオレンスアクション「God of War(GΩW)」の主人公で、最初はスパルタの武将として雷名を轟かせ、やがては神を相手にその暴虐ぶりを発揮する、洋ゲーで最も危険なハゲ親父だ。管理人の脳内ランキングでは「最もカッコいいアクションゲームヒーロー」であると同時に、「最も敵に回したくない主人公キャラ」でもある。
暴力的な主人公というのは掃いて捨てるほどいるが、GΩWというゲームは謎解きから各種の演出まで、その全てが彼の凶暴性を最大限に発揮する形で作られている。
例えば2の巨大ボス・クラーケンとの戦闘だと、「クラーケンを倒す」「オブジェクトを操作して橋を架ける」を同時にやる。どういうことかというと、クラーケンをさんざん痛めつけた末に伸縮式の橋を作動させ、それで串刺しにしてとどめを刺すのだ。
とにかく力こそ全て。暴力だけじゃ解決できないけど、解決するには何らかの暴力は必須、という信念とでも言うべきものがゲーム全編に満ちており、それがクレイトスの野蛮な魅力を力いっぱい後押ししている。
彼の外見も、不敵な面構えと鍛え抜かれた体躯、手にするのは怪物を屠るに足る禍々しい双剣と、一般的なヒーロー像から逸脱するほど凶暴な空気を漂わせている。あまり大きな声では言えないが、こういう蛮性に憧れる部分を男は誰しも(程度の差はあれ)持っていると思う。
そしてこれは、80年代のタフガイ・ヒーローを思い起こさせる要素でもある。
90年代中ごろからゲームはアニメとの親和性が高まり、キャラクターがより細かく描写されるようになった。だが、そのころにはタフなオヤジキャラはもう流行りではなく、アイドル的な美男のヒーローがメインを張るようになった。そしてその風潮は現在まで続いている。
ヒーロー像は時代の流れとともにある程度変化していく。それについていけなかった、あるいはついていく気がなかった人間は、クレイトスの中にかつていた「タフな、大人の男」としてのヒーローを見ているのではないだろうか。
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