07.05/08 お知らせ






 360の「レインボーシックス・ベガス」をうっかり買い逃し、 ちょっぴりご機嫌ナナメの管理人です。コンバンワ♥
 これはひょっとすると真面目に更新しろボケというバイオレンスアクションの神のイタズラかもしれませんネ。 というわけで今回はゲームからちょっと離れ、漫画の話でもしてみようと思う。




 人並み…というか普通のオタク並みに漫画好きな管理人だが、コミックスの新刊が出るたびに買い揃えている作品は 「シグルイ」と「でろでろ」のふたつだけと少なかった。…のだが、最近新たに「新刊買い」するようになったのが、 上の画像の 「へうげもの」(山田芳裕著・モーニング連載中)だ。
 知っている人も多いと思うが、織田信長に仕えた実在の武将・古田左介を主人公にした時代物の漫画で、 「数寄者(すきもの)」を主題にした作品である。

 数寄者とは茶の湯などの芸能に堪能な人を指す。茶の湯の様式を学び、 茶器やその他の美術品の美しさを知る、一種の教養人と言ってもいい。
 主人公たる古田左介は使い番(一種の連絡将校)として働く一方、名物に目を輝かせる数寄者ぶりを発揮する。 第一話で左介は信長に敵対する松永久秀へ降伏を進める役を任されるが、その任務よりも、久秀が持つ伝説的な茶器「平グモ」 を目にすることができるやもしれぬ、という喜びに激しく興奮する。
 この名物に対する興奮っぷりは左介…というよりこの漫画に登場する数寄者たちに共通する部分であり、 そのオーバーアクションが笑いを誘う一方、名物の持つ「美」への希求心に憧れに似たものを感じさせる。

 数寄者とは一種のオタクと言うこともできるだろう。
 平グモを目にして感涙に咽び、久秀とともに爆散した平グモの、せめて蓋だけでも手中にせんと身を投げ出す左介を見ながら、 管理人に囁きかける内なる声――

『自分はこれまでのオタク人生の中で、どれだけ左介のように感動してきただろうか?』

『どれだけ真摯に“美”に向かい合ってきただろうか?』



 男装した美少女が時折のぞかせる恥じらいの表情萌エ――――――!!

っててめぇその記号がそろってりゃなんてもいいんじゃねぇかよボケが!という自己批判の声が脳内に。 いや、違うんだよ。何でもいいってことじゃなくてやっぱり見た目は清楚な感じでね? そんでもってサラシで隠してるけど実は巨乳ってのはやっぱりちょっとドリームすぎるから胸は控えめで なおかつ本人はそれを気にしてる風などがいいかな、なんて…とグダグダな弁解を脳内で始めそうになる。 文章にすると予想以上にキモいなこれ。


 話を戻そう。
 同じ時代を描いた漫画に「花の慶次」があるが、あちらが「いくさ人」という観点から人物を描いているのに対し、 「へうげもの」は「数寄者」という観点から人物を描いている。その違いが如実に表れているのがこの人物だ。





 この時代最高の教養人、「わび茶」を完成させた千宗易(後の千利休)である。  「花の慶次」では慶次の引き立て役な印象の強かったこの人物だが、「へうげもの」宗易はちと違う。 先に感想を言うと、すげぇイカした人物に描かれている。
 きらびやかに飾り立てた華やかさではなく、枯れた風情に美を見出す「侘び」こそ最上とし、 その美意識をこの国すべてに及ぼさんとするこの男は、時に武将よりも怪物的に映る。
 野望実現に向けて作中でどのように動くかはここでは書かないが、2巻における彼の台詞―― 「華は咲き乱れるのでなく、一輪あらばよろしいのです」という言葉の中に集約されているように思う。


 史実では、千利休は秀吉との確執の末に切腹を命じられている。
 「へうげもの」でも現在、二人の関係に明確な亀裂が生じているが、その理由も「互いの美意識の相違」が絡んでいる。
 1巻の巻末には主要な登場人物の簡単なプロフィールがあり、その中に「好きな色」も設定されているのだが (架空かどうかは不明)、秀吉と宗易の嗜好を見るに、両者がもともと相容れない者同士だったのではないかと思わせる。





 安土桃山時代は、多種多様な文化が花開いた時代である。
 縦横に張り巡らされた「美」の中で生きる数寄者たちの姿は、あまりにも真摯で、それゆえ時に滑稽で、 そして強烈に引き付けられる。あまりない観点の時代モノだけに、多くの人にお勧めしたい作品である。

 とりあえず管理人は「へうげ宗易」リスペクト。
 極限まで無駄を省き、そこに華一輪。管理人の個人的な感想だが、「スタイリッシュ」とはこういうことではないのか。
 アクションで言うと、昨今ではお洒落なコスチュームの美形主人公がオーバーアクションで悪者を蹴散らすのをスタイリッシュと言ったりするが、 管理人に言わせればそれは特撮ヒーローアクションの延長でしかない。
 「今風のカッコイイ要素」を詰め込むのも結構だが、はたしてスタイリッシュとは何なのか、考え直してもいいころだろう。

 いや、別に茶坊主が茶釜をブン回して戦うスタイリッシュアクションを作れとかいうことじゃなくてね?
 



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