13.09/10 ステルスアクション
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 皆、ステルスは好きか?
 B-2爆撃機の話じゃないぞ。忍者でも暗殺者でも特殊部隊員でもいいが、闇に潜み影を走り、暗がりから音もなく命を奪うステルスアクションゲームが好きか、という話だ。

 管理人は正直、それほど好物というわけではない。アクションゲームは正面きっての大立ち回りこそ華!という意識が強いのか、見つからないように、気づかれないようにと慎重な行動を要求されるのはどうしてもフラストレーションが溜まる。
 だが敵の背後に忍び寄って喉笛をかっさばくのは、そのフラストレーションに見合うカタルシスがあるのもまた事実だ。実際、PSのステルス忍者アクション『天誅』は大好きだったし、ステルスそのものが嫌いというわけではない。よりハッキリ言うと、「ステルスキル」は好きなのだ。

 しかしよく考えてみると、一般にステルスアクションといわれるゲームの中で「ステルスキル」に主眼を置いたものは少ないことに気づく。

 もう一歩踏み込んで分析すると、「ステルスアクション」というジャンルは大きく2つに分けられるように思う。
 ひとつはステルスが“主”、キルが“従”となるゲームで、ステルスキルは目標達成のための手段のひとつに過ぎない。むしろ倒しすぎるとクリア後の評価で良い点をもらえなかったりするので、敵も倒さず、何の痕跡も残さずに目的を達成するのがスマートであるとされる。

 もうひとつは逆にキルが“主”、ステルスが“従”となるタイプだ。エリア内の敵を全滅させることがクリア条件であったり、敵を倒すことが評価アップに繋がるゲームがこれに当てはまる。ここでのステルスは敵を効率よく始末するための手段であり、ゲームデザインとしては「敵を倒して進む」というオーソドックスなアクションゲームに近い。

 己の存在を全く感知させずに任務を遂行するか、いかに素早く効率的に獲物をしとめるか。この2つは同じように見えるが、その基礎にある美学・哲学に違いがある。
 前者は「不殺推奨のステルス」、後者は「必殺推奨のステルス」と定義できるが、分かりやすく比較するため、絵で表現してみよう。











 逆に分かりにくいって? そうか。じゃあ分かりやすく文章で解説しよう。不殺のステルスと必殺のステルスを分けるのは、敵に対する視点の違いだ。
 不殺推奨のステルスゲームなら敵は単なる障害にすぎない。トラップとして仕掛けられた爆弾のように、警戒しつつ脇を通り抜けるだけの存在だ。敵に手出しするのはやむを得ない場合に限られる。
 しかし必殺推奨なら、敵は“獲物”である。その動きを観察し、追跡し、あるいはおびき出して仕留める。その瞬間の快楽こそ全てであり、時には銃で武装した敵の後ろ姿が、狩られるのを待つウサギちゃんに見えるほどだ。


 管理人が好きなのは言うまでもなく「必殺推奨のステルス」の方だが、先にも述べたようにこのタイプのゲームはあまり多くない。高い自由度が評価されたステルス界の新星
『Dishonored』は敵を殺害しまくると後のステージでゾンビ的な敵が登場するなど徹底して不殺推奨だったし、往年の名作ステルスゲーのリメイクとして話題の『Thief』も不殺推奨のゲームだ。
 そもそもステルスゲームを好む層が「不殺推奨のステルス」に美学を感じているようでもある。例えば『SplinterCell:Conviction』は極めて攻撃的な必殺推奨寄りのステルスゲーだが、ファンは最終的なやり込みとして「ノーキル・ノーアラート」クリアを目標にしている。

 脅威を逐次排除していく必殺ステルスより、最後まで気の抜けない不殺ステルスの方が高い戦略性を求められる場合が多いのは確かだ。そこがゲーマーとしてチャレンジスピリッツを喚起されるのは理解できる。

 だが…。

 だが……。

 管理人としては獲物を仕留める際の快感こそ至高だと声を大にして言いたい。無防備な背中を晒している敵に忍び寄る嗜虐的な悦びは、通常のアクションゲームでは絶対に味わえないものだ。そもそも隙を見せている敵をどうして素通りできる? 据え膳食わぬは男の恥というが、ステルスにおける敵にも同じことが言えるではないか。AKで武装したテロリストたちの「私を食・べ・て♥」というメッセージが聞こえるのは俺だけなのか? 敵を無力化する手段が与えられているのに、なぜそれを使わずに済ませようとする? 使わない方が美しいというルールを持ち込む? 殺るか殺られるか、狩るか狩られるか、そのせめぎあいこそ戦闘アクションの要諦ではないのか? 阿呆面さげてうろつく連中の息の根を止めるより楽しいことがあるんなら教えてくれ。息が詰まるような隠密行動から解放されるあの瞬間よりも気分が高揚するものがあるんなら教えてくれ。ノーキルもノーアラートもクソ食らえだ。俺の許可なく呼吸している奴はみんなあの世に送ってやる。一人ひとり首を掻き切って死体を壁に張り付けてやる。このステージは巨大な檻で、貴様らは投げ込まれた生き餌に過ぎないと分からせてやる。


 って管理人の友達が言ってました。
 まとめると、必殺ステルスはもっと注目されてもいいと思うよ!ということだ。
 あ、アレだなー。上のほうで描いた不殺ステルスと必殺ステルスの絵、不殺ステルスの方は例えとしてちょっとズレてるな。「敵は獲物ではなく単なる障害」なのだから、女子更衣室である必要はないんだよ。男子柔道部の汗臭い部室だろうが、ただいま私刑執行中の男子トイレだろうが、そこをくぐり抜ければよしというのが不殺ステルスなわけだから。

 そう考えるとやっぱり必殺ステルスの方がいいなって思うでしょ?
 問題はスカートめくっても対象を無力化できるワケじゃないから、必殺ステルスの例えとしてはやっぱりズレてるんだけど。結局どっちもダメじゃねぇか! アホか!



追記1:
 妄想だけまき散らして終わるのも何なので、管理人がプレイしてきた「必殺ステルス」のゲームについて触れておこう。
 といってもステルスゲーム(あるいはステルス要素のあるゲーム)は、はっきり不殺・必殺に分かれるわけではなく、大抵は両方の要素を兼ね備えている。そこで、ここではあくまでも「必殺寄り」ということで話を進めていきたい。


・天誅
・天誅・忍凱旋

 いきなり古いゲームで申し訳ないが、このゲームが管理人にとってはステルスアクションのベンチマークなのだ。3Dアクションにおけるステルスの基本要素は大体そろっているが、鉤縄を使って広いステージを縦横に移動できるのが他との大きな違いだろう。現在主流のタイトルはほとんどがステージが屋内に限定されてパズル的な立ち回りを要求されるが、本作にはそういう窮屈さがない。もちろん発見されないような慎重さは求められるが、基本的には広いステージの中で敵を見つけ出し、1人ひとりあの世に送るのが目的のゲームだ。
 ステージクリアにキルは必須ではないが、キルはちゃんと点数として加算されるようになっているので、見つからずに皆殺しにするのが最上とされる。こういう“ステルスの緊張感”と“広がりのあるステージの開放感”を両立させたゲームは少ない。何でだろうね? こんなに楽しいのに。


・Batman:Arkham Asylum
・Batman:Arkham City

 12/5には最新作『Batman:Arkham Origins』(邦題:バットマン:アーカム・ビギンズ)も出る人気シリーズ。カンフー映画顔負けの格闘パートと並び、ステルスで敵を倒すパートを備えている。バットマンは不殺を信条としているのでステルス“キル”はしないものの、クリア条件が「全ての敵の排除」なので、ゲーム的には必殺ステルスのゲームといえる。
 バットマンらしくマントをはためかせて滑空したり、ワイヤーで高所に移動したり、はたまた排水溝に潜り込んだり、移動の面でとても選択肢が多いのが攻略に幅をもたせており、ファンからの評価も高い。
 ちょっとばかり残念なのが、背後から敵を仕留める演出が「チョークスリーパーで落とす」という地味なもののみであること。キャラクター的に首をへし折ったりはできないので仕方ないが、少々カタルシスが足りない。延髄に手刀を打ち込むとかバリエーションがあっても良かったと思う。
 本作のステルスパートで個人的に最も評価しているのは、敵の「恐怖」が細かく演出されている点だ。敵の数を減らしていくと徐々に敵が怯えだすのだが、それがとても心地よい。この「恐怖」という要素はステルスゲーの新たな境地を開くカギになるんじゃないかと思う。


・Splintercell:Conviction
 ステルス中年ことサム・フィッシャーが大暴れする「スプリンターセル」シリーズのひとつ。本作から複数の敵を瞬時に仕留める「マーク&アクション」を導入し、ステルスアクションとしては異例なほど戦闘的なゲームに仕上がっている。
 慣れればほぼノーキルで進めることも可能らしく、その意味では禁欲主義者のような不殺ステルス好きにも評価されているようだが、ここはやはり近年珍しい「必殺前提のステルスゲー」として楽しむことをお勧めしたい。主人公サムおじさんのアクションはイスラエルの軍隊格闘技クラヴ・マガを参考にしたそうで、近接攻撃のバリエーションも異様なまでに豊富だ。このあたり三人称視点の利点をフルに発揮している。
 個人的に減点要素なのが敵が完全にこちらをナメてかかっている点。前述の『Batman〜』とは反対で「逃げ回るしか能がないのか?」などと余裕ブッこいた台詞を吐くのがカンに障る。命がかかってんだからもっとビビってほしい。
 最新作の『Splintercell:Blacklist』は完全隠密から派手なドンパチまでカバーしており、なかなかに意欲的な作りである。まだプレイ中ではあるが、Convictionの正統進化といってよさそうだ。


・GhostRecon:Future Soldier
 ドンパチあり、ステルスありのTPSだが、どちらかといえばステルス(必殺)に重きが置かれている。ユニークなのが“シンクショット”システムで、分隊員と手分けして最大4名までの敵をほぼ同時に射殺できる。例えば敵兵が相互に監視しあっている状態でも、シンクショットで全て同時に片づければOKというわけで、プレイヤーの必殺能力は群を抜いて高い。上記のSplintercell:Convictionのマーク&キルと似ていなくもないが、こちらは使用に当たって制限はない。
 ノーキルでの進行が実質不可能(と思われる)ため必殺ステルスに分類しているが、基本的にはTPSであり、またステージ構成もほぼ一本道なため、創意工夫の余地が少ないのが惜しい。というか単純にTPSとしてイマイチだと思います。レインボーシックスの続編はまだですか?


・FarCry3
 南国を舞台にしたオープンワールドFPSだが、ステルス要素がかなり強いゲーム。中でもマップ内に点在する敵拠点を制圧するサブミッションは、すべての敵の排除がクリア条件なので必殺ステルスゲーに分類できる。
 今のところ、管理人の中ではこれが天誅に次いで高評価の必殺ステルスゲームだ。拠点を双眼鏡で観察して襲撃計画を立て、物見櫓にいる敵を狙撃で排除したり、猛獣の檻を破壊して敵を襲わせたり、敵をおびき出して殺害したりと、採れる戦術の幅が広い。
 また本作はEXPを得ることで様々なスキルを取得していくが、ステルスキル関連のものが充実しているのも特色だ。高位スキルだと敵を後ろから刺し、そいつの腰のナイフを抜き取って別の敵に投げるなどカッコいいものもあり、ステルス“キル”へのこだわりが感じられる。
 ゲームはステルスもアサルトも楽しめると喧伝しているわりにはステルス推奨に傾いており、そこが個人的には不満点でもあるが、必殺ステルスのゲームとして楽しいのは事実だ。
 ところでDLCの『BloodDragon』のローカライズはまだですかね。スパルタカスレジェンドよりそっちの方を楽しみにしてたんですけど。




追記2:
 ステルスキルについてさらに言うと、敵を気絶させて戦闘不能にするのではなく、明確に、はっきりと、命を奪いたい。ステルスキルには通常のアクションのように、自分と相手が激突する時に生じる命の煌きがない。であるならば、命が消滅する際の輝きがその代わりになるべきだ。

 敵はこちらを殺したがっているのに、こちらは気絶させるだけで満足せねばならないというのは対等な関係とはいえないだろう。不殺ステルスなら殺害しないことが美学になりえるが、必殺ステルスなら通常のアクションのように、自分と敵の関係は対等であるべきだと管理人は思う。
 不意打ちで一方的に殺害するのは対等ではないという意見もあろうが、失敗して見つかれば殺されるのはこちらの方だ。その意味でステルスアクションも通常のアクションゲームも同じなのだ。

 これは一種の「愛」と言い換えてもいい。親が子に与えるような無償の愛ではなく、対等な者同士、お互いに支えあう者同士での愛だ。一方的に与えたり一方的に欲しがったりするのではなく、自分がして欲しいことを相手にもする。そこに信頼が生まれ、本来他人だったもの同士に強い繋がりが生まれる。簡単なようで難しいが、それはきっととても大切なことなのだ。
 つまり無音殺人術は愛だということ。

 君が僕にしたいことを、僕も君にしてあげるよ。




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