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一晩考えた末に、俺はコリン・モリアティを殺すことに決めた。
俺の外見――モヒカンにスパイク付きアーマーといった出で立ちにはそぐわないかもしれないが、俺はこの荒みきった世界で正義を行おうと努めてきた。困った人間がいれば助けてやったし、そのために危険も冒した。この掃き溜めの町「メガトン」の住民ともおおむね良好な関係を築いてきた。そんな俺が殺しを決意したのにはそれなりの理由がある。
コリン・モリアティ。メガトンで酒場を営む、ずる賢い情報通。到底好きにはなれないタイプだが、奴の握っている情報には失踪した俺の父に関するものも含まれている。その情報を得る交換条件として使い走りもしてやったのに、奴はその上さらに100キャップを要求してきやがった。
その時の奴の顔、物言いは明らかに俺を馬鹿にしていた。口先だけでどうにでも転がせる、格好だけ粋がっている若僧だと。
正直に言って、俺は父の捜索についてそれほど必死になってるわけじゃない。だが、俺の金玉を握ったつもりになっているあの間抜けに舐められるのは我慢ならない。奴がしゃべれなくなっても、酒場のターミナルにはアクセスすれば欲しい情報が手に入るはずだ。奴を消してからゆっくりパスワードを探すなりハッキングを試みるなりすればいい。
それにコリン・モリアティは皆の嫌われ者だ。酒場で「特別なサービス」をさせられているノヴァ、雇われバーテンとしてこき使われている哀れなグール。奴が消えたところで悲しむ者は誰もいない。
しかし嫌われ者とはいえ正式なメガトン住民に手をかけたとなれば、俺も重犯罪者として処刑されかねない。奴を殺すならひっそりと、誰にも知られずに片付ける必要がある。
俺は奴の酒場で、1対1になるチャンスを待った。
深夜、店内から人の姿が消えるのを待ち、2階にある奴の部屋をのぞいた。入口に背を向けた姿勢でベッドに横になっている。
振り返り、人の姿がないことを確認すると部屋に入って扉を閉めた。ベッドの側に歩み寄る。寝息を立てている間抜けなモリアティ。なるべく音を立てずに済ませたかった。スーパーマーケットの廃虚で、レイダー…ならず者からぶんどった中国軍将校の剣を抜く。
人生で初めての殺人を犯そうとしている。ふと、そんなことを思った。これまで1ダース以上のレイダーどもを始末してきたが、それは数に入れていない。なぜなら、奴らはけだもの同然のクズどもだからだ。そうだ、このコリン・モリアティだって奴らとそう変わらない。良心の呵責を感じる必要はない。
俺はこの荒れ果てた世界で、悪党を始末し弱い人間を助ける生き方をしてきた。今からやろうとしていることだって、それと似たようなものだ。俺は間違ったことはしちゃいない。
この酒場で働くノヴァのことを思った。「私はここに終身刑よ」と言っていた彼女。モリアティが消えれば、きっと彼女も新しい人生を始められる。
俺は剣を振り下ろした。
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