09.12/24 その104 クリスマスだし賛美歌でも歌おうぜ! 東部戦線で。





「あと二日でクリスマスだな、諸君、そうじゃないか」
 まさにその通りである。カレンダーはこれを教える。だが、離陸―出撃―着陸―離陸―出撃、私たちのリズムはこれ以外にはない。明けても暮れても、ここ数年間つづいたリズム。他のあらゆることがこれに吸収されてしまっている。寒さも、暑さも、夏も、冬も、日曜日も。一日が過ぎて一日が来る。今日の呼吸は昨日の呼吸と全くおなじである。“出撃”“どこへ”“どの部隊に”“対空砲火”このようにして、永久につづいていくのが、私たちの人生であろうか。

――ハンス・U・ルデル「急降下爆撃」より



 WW2の東部戦線でソ連軍相手に大暴れした、ドイツの撃墜王ならぬ戦車撃破王ハンス・ウルリッヒ・ルーデルの回想録より。
 この本におけるルーデルの無茶っぷりはアンサイクロペディアに主要なものが抜粋されているが、実際に通読してみるとその戦闘中毒ぶりにビビらされる。
 例えばその武勲ゆえにヒトラーから安全な地上勤務を命じられても、前線で戦いたいという理由からそれを断っているわけだが、これなどは勇敢さの表れというより、本当に心から戦車をブッ壊すのが好きで好きでたまらなかっただけなんじゃないかと思わざるを得ない。ていうかコイツ主人公にしてエースコンバット作れますよ。戦闘中に聞こえてくるソ連軍の無線とかまさにAC04のノリだし。



「スツーカが西方から近付いてきた。隼隊全員に命ずる。スツーカををただちに攻撃せよ。約二十機――先頭に二本の長い棹をつけたのがいる。それが中隊長ルデルだ。われわれの戦車をやっつけたやつだ。隼隊全員に命ずる。その長い棹をつけたスツーカを撃墜せよ」



 二本の棹――37mmカノン砲2門を装備した、ヤケクソレベルの攻撃特化型シュツーカを駆り、東部戦線に死と破壊と恐怖をバラまいたルーデル。どうだろう。いくぶん誇張が混じっているとしても、ゲームの主人公にはうってつけではないだろうか。メビウス1ばりに有能で、オメガ11ばりに不撓不屈。…実際、何度か撃墜されてるしね。同じく東部戦線で活躍したエース、エーリッヒ・ハルトマンもセットでゲーム化してほしいもんだ。…まぁ無理だろうけど。
 そんなわけでルーデル著「急降下爆撃」はなかなかに面白かったです。以前紹介した「出撃! 魔女飛行隊」がJRPG的萌えイズムだとすれば、こちらは洋ゲー的マッチョイズムに彩られていると言える。そういうものを求めている方にはお勧めしておきたい。


 というわけで、今回はクリスマスの話なんだけど。

 何がどう「というわけで」なんだか分らねぇよこのドンパチ野郎と言われそうだが、これでもちゃんとネタ作りに勤しんでたんですよ! この日のために!
 まぁここ最近読んだ軍事関係の本やらテキストからクリスマスに関するものをメモってたというだけなんだけどね。

 いかんせんあまり数はそろわなかったんだけど、クリスマスという祝日…家族と祝う心温まるイベントにふさわしいと思われたのが、「スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943」という本にあった。



十二月に入った途端、彼らは食べ物を少しづつ取っておくようになった。雪を踏んで包囲を突破する際の準備ではない。クリスマスのごちそうとか贈り物にするためである。第二九七歩兵師団は早めに駄馬を殺す。クリスマスのプレゼント用に「馬肉ソーセージ」を作るためだった。降臨節の冠は常緑とはほど遠い大草原(ステップ)の枯れ草で制作され、小さなクリスマスツリーは「故郷と同じように」しようとの儚い思いで木切れを彫って拵えた。


 イヴに歌われた昔ながらの賛美歌は『清しこの夜』である。とっておきのろうそくの使い残りを灯した薄暗い壕の中で、兵士たちは「かすれ声で」歌った。大勢の者が故郷を思って忍び泣いた。


――第四部・ジューコフの仕掛けた罠・「クリスマスはドイツ風に」より



 …心温まるっつーか、涙まで凍りつきそうなエピソードじゃねぇか。

 イギリスの戦史作家アントニー・ビーヴァーの手による本書は、膨大な資料を元にスターリングラードの戦いを描いたノンフィクションである。その資料には独ソ両軍の兵士が遺した手紙も含まれており、苛烈を極めた攻防戦に生々しい肉付けをほどこしている。
 抜粋部分は弾薬、燃料はもとより食料さえも欠乏し、絶望的な戦いを強いられるドイツ軍の兵士たちの描写だが、酷寒の大地で遠く故郷を想い、在り合わせのものでクリスマスを祝うその姿はあまりにも切なく、悲しい。


 えっと…ごめん。クリスマスの話…だったよね。
 もうちょっと違うやつの方が良かったかな。
 これとかどうだろう↓



軍オタが好きな名言、名ゼリフ AusfX

758 :名無し三等兵:2009/10/30(金) 10:46:07 ID:???
  われわれは子供の頃、決して嘘をついてはいけませんと、家庭や学校で耳にタコができるほど
  聞かされるわけだが、その教えを大人になっても律儀にに守っている人間がいたとしたら、そい
  つは正直者とは呼ばれない。ただのバカである。
  たとえば、明日のクリスマスを楽しみにしている四歳の娘に、サンタクロースとはアメリカ商業主
  義の権化であると説くことが、人として正しいといえるだろうか。
  ――歌野晶午、「葉桜の季節に君を想うということ」

759 :名無し三等兵:2009/10/30(金) 10:51:08 ID:???
  五歳の息子に説いた俺は人として正しくないのか……。
  商業主義の権化だとかは言ってないが。


764 :名無し三等兵:2009/10/30(金) 13:33:05 ID:???
  「レーダーで調べた結果、サンタが北極から南に向かった形跡がある」

  CONAD司令官ハリー・シャウプ大佐




 >>759はさておき、シャウプ大佐の発言は有名な「サンタクロース追跡作戦」の発端となった台詞だ。当時のCONADが現在のNOLAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)に変わった今も継続されている有名なイベントである。
 皆知ってると思うが一応説明すると、アメリカの大手スーパーが「サンタクロースとお話ししよう」みたいな企画をやったはいいが間違った電話番号を載せてしまい、それがよってよりにもよってCONAD(中央防衛航空軍基地)司令官のホットラインの番号だったというのが発端だ。

 平成生まれのF.N.Gたちには想像もつかないだろうが、かつて米ソ2大国の全面核戦争→人類滅亡というシナリオは、生々しい恐怖として当時多くの人の心に巣食っていた。
 娯楽作品においてもその影響はいたるところに見られる。「北斗の拳」やその舞台設定の元となった「マッドマックス2」は核戦争で文明が崩壊した後の世界を描いているし、小説「銀河英雄伝説」では、人類の生活圏が地球にとどまっていた時代に核戦争が起き、滅亡寸前に追い込まれたという設定がある。「風の谷のナウシカ」も、人類の造り出した兵器による「炎の七日間」なる大災厄について語られるが、これも核戦争の終末イメージが元ではないかと思われる。
 また、80年代に描かれたアメリカンコミックの金字塔「ウォッチメン」も、米ソの対立が深まる中で刻々と世界の終末が迫ってくるという世界観をベースにしている。物語の各所で終末時計がモチーフとして使われていることもその表れだろう。

 多くの人間が「人類滅亡」というテーマに対し、あるていど共通したビジョンを持っていたあの時代は、今から考えると人類史上極めて特異な時代だったのではないかと改めて思わされる。



 ……。


 ほらまた脱線した! もう!
 クリスマスに世界終末ネタとかやめろよマジで! 非モテ系の僻みと思われるだろ

 まぁ何が言いたいかというと、シャウプ大佐のユーモアセンスは見習いたいということだ。
 アメリカの核戦略においてきわめて重要な位置にあるCONAD…そこに突然「サンタさんいますか?」的な電話が(ホットラインで)かかってきたらブチ切れても不思議はない。…いや、実際最初は怒ったらしいという話もあるけど。
 しかし、うまく機転をきかせて子どもの夢を壊さずに切り抜けた点は大いに評価されていい。「あぁん? サンタなら今ごろオメェの母ちゃんに乗っかってるだろうよ」などと下劣なジョークを飛ばして子供の夢を踏みにじるより、よっぽど世のため人のためになったと思う。
 サンタクロースは多くの子供たちにとって夢の化身とも言える。「クリスマスなんてさっさと過ぎ去ってしまえばいいのに」などと後ろ向きになっている独身男女は、サンタの来訪を心待ちにしていた子供のころの純粋な気持ちを今一度思い出してみてはどうだろうか。

「サンタクロース追跡作戦」公式サイト


 え、管理人ですか? もちろん管理人は今年もいい子にしていましたから、きっとサンタさん来てくれると思っていますよ?(←星のカービィばりにピュアな瞳で)

 とりあえず今夜はクリスマス気分を高めるため、クリスマスツリーでも作ろうかと思っている。

 BFBCで。



【PS3】Battlefield Bad Company Part50【BFBC】

711 :なまえをいれてください:2009/12/18(金) 21:43:58 ID:DvJ3WByg
  ☆クリスマス前にクリスマスツリーを作ろうキャンペーン2009★

  ・12月23日、クリスマス前に、みんな大好きクリスマスツリーを作ります。
   イルミネーションは持参!

  ・やりたい人は21日までにIDを書いていくとかしてください。
  ・戦車から芋・・・そこら辺の木まで全てツリーにしちゃいましょう!!



  ※ただし人数が少ない場合は決行しませんのでご了承ください




 去年はこれでかなり盛り上がったらしい→(雑文64・クリスマスだし、BFBCでもしようぜ!
 ただ問題は360版ではそういう話が全然出てないこと。
 お前ら年中無休で戦争か! 今日くらいは戦いを忘れてクリスマス祝ってもいいだろうに! ……管理人も仲間に入れてくれ(いつも通りの平常運転ですね)。


 接続―出撃―休憩―トイレ―出撃、俺たちのリズムはこれ以外にない。明けても暮れても、ここ2年間つづいたリズム。“芋砂”“どこに”“どの分隊に”“ヘッドショット”このようにして、永久につづいていくのが、私たちのゲームライフであろうか。


 休憩とトイレは一緒でいいだろと突っ込まれそうだが、実際のところ管理人含むドンパチ野郎のゲームライフはこんな感じだと思う。きっとクリスマスが終わり、年が明けてもこのむせかえるような血と硝煙の中で――いや、ジョークで言ってるんですよ? だからそんな哀しい眼を向けるのはおやめ。ひっぱたくぞ。
 …あ、大掃除の準備もしなきゃ…。



追記:
 管理人は現在、クリスマスに備えて「シベリヤ抑留兵よもやま物語」(斎藤邦雄・著)を読んでいるわけだが、その中で面白い話があったので紹介しよう。
 ラーゲリ(収容所)に入れられていた著者が国営浴場(ロシアの浴場はサウナ)の手伝いに駆り出された話なのだが、そこでは入浴中に客の服を滅菌消毒するようになっていた(シラミが多かったため)。著者がその時担当させられた仕事がこれで、客から脱いだ服を受けとって消毒室へ入れ、客が出てきたらそれを返却するというものだったのだが……どういうわけか、そこへ師範学校の女学生たちが入浴にやってきたのだ。
 1人ひとり服の受け渡しをするわけだから、当然全裸を拝むことになる。


 なにしろ、若い娘たちのみごとな裸の群れである。金、銀、茶、黒と娘たちは色とりどりであったが、私の存在などは浴場の柱の一本ていどに思っているのだろうか、私の目の寸前に素っ裸を見せているのに平気なのである。



 言っちゃなんだがエロ漫画みたいなシチュエーションだな。
 英米の捕虜収容所では、女性士官が日本人を家畜と同列に見なしていたため羞恥心を見せなかったと言う話があるが、この本にあるロシア人民との交流を見る限りでは、この女学生たちの態度はそういった人種的蔑視とはまた別のもののように思える。じゃあ何なのかと言えば著者自身も答えを出せていない。
 もっとも、強制労働と粗食に弱りきっていたため若い女の裸にも全く興奮しなかった(できなかった)という悲しい事情があった。


 だから私が、このようなバーニヤ(浴場)の使役に行った話をしても、オレも行きたい、という人はすくなかった。それよりコルホーズ(農場)のジャガイモ掘りになると、だれもが行きたがったのである。



 ジャガイモ掘りもきつい労働には違いないが、その後はジャガイモを食わせてもらえるという余禄があった。三大生理欲求と言われるものの、まず自身の生存に必要な「食欲」こそが第一で、性欲などは二の次、三の次なのだろう。
 ラーゲリは場所によって待遇も差があり、著者が収容されたいくつかのラーゲリはにかなりマシな部類だったようだと書いている。そのせいかあまり重くならずに読める本なのだが、随所に出る飢えのエピソードや、「シベリア病」と通称しているモラルの崩壊などに、人間性を剥奪する過酷な収容所生活を垣間見ることができる。


おまけ:

【BF1943】Battlefield 1943 ▲47総合

522 :なまえをいれてください:2009/12/13(日) 22:44:18 ID:wIzR3Sl0
  人が増えりゃ頭のおかしな連中も増えるもんだな。

523 :なまえをいれてください:2009/12/13(日) 22:45:34 ID:NhJigVO+
  ええ、暖かくなってきましたからね

527 :なまえをいれてください:2009/12/13(日) 22:56:32 ID:OTyAQqcc
  >>523
  今12月なんだが

532 :なまえをいれてください:2009/12/14(月) 01:27:58 ID:ICaWR0vy
  >>527
  シベリア抑留から帰ってきた人なんじゃね?

  ある意味WWUネタなんだが、ウチの祖父(故人)は、シベリア抑留されてて、
  それでもなんとか日本に帰ってくることができた。
  日本に帰還したときは真冬だったんだが、それにも関わらず祖父の口から出た言葉は一言、
  「あったかい」
  だったのだそうな。

  書いてたらなんかソ連にイラついてきた。WaWやってくる。




 前にちらっと立ち読みしたシベリア抑留の本は「戦友の亡骸を葬ろうにも地面が凍りついて掘れない」という、読んでるだけで凍傷になりそうな記述があった。
 買わなかったことを今になって悔やんでいるが、この冬のうちに探して読んでおきたいものだ。



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