13.06/10 その190 CastleStorm――たまには2次元もいいよね!





 困ったぞ…『Castle Storm』がアホみたいに面白い。今年上半期で一番の時間泥棒ソフトなんじゃなかろうか。
 Chokeointの海外レビューでやたら評価が高かったので(このレビューで初めて存在を知った)、800MSPという安さにつられて買ってみたらどっぷりハマり、「え、もうこんな時間!?」という感覚を久々に味わった。

 どういうゲームかというとファンタジー風の世界観で攻城戦をやるタワーディフェンス+アクションシューティングで、プレイヤーは主にバリスタ(設置式の大型弩弓。弩砲)を操作して敵を攻撃しつつ、歩兵や弓兵などを出撃させて敵の城を落とすことになる。
 同じXBLAの『Toy Soldiers』シリーズや『Orcs must Die!』などタワーディフェンス(以下TD)にアクションorシューティング要素を盛り込んだゲームは珍しくないが、本作はさらに“普通はあって当然”の要素を切り捨てることで独自色を出しているところが面白い。

 とりあえずその辺を解説する前に、CastleStormは攻撃的なTDであるということを強調しておきたい。自軍の拠点を守るだけでは勝利にならず「敵の城を破壊する」あるいは「敵の旗を奪って持ち帰る」のいずれかを達成することで勝利になる。防御戦オンリーではないTDは他にも例があるが、本作は以下に述べる取捨選択を行った結果、特色がさらに際立っている。


■地形の概念がない
 Catlestormの一見して分かる特徴が、横スクロールアクションのようなサイドビュー方式であることだ。ベルトスクロールアクションのように擬似的な奥行きすらない完全な2次元である。ステージ左端に自分の城、右端に敵の城があり、その間には一部のステージを除いて遮蔽物も何もない。実にシンプル極まる、地形もへったくれもない作りだ。

■砲台設置の概念がない
 本作の主な攻撃手段は城門の上に設置されたバリスタで、これで矢を射たり爆弾を発射したりする。射程距離はステージのほぼ全域をカバーし、攻撃と防衛に大活躍する。本作にはれっきとした主人公キャラがいるが(後述)、真の主人公はこのバリスタだといってもいい。
 このバリスタは敵に破壊されることはないが、増やすこともできない。そのため「各種の砲台をどこに設置するか」という戦術要素は存在しない。

■「待ち」の概念がない
 上記の特徴2つが何をもたらすかというと…「待つ」という概念が非常に薄いことだ。TDは名前の通り守りに重点が置かれるのが普通である。地形を考慮した上で砲台を設置し、いかに効率的に敵を殲滅させるかが肝となる。「ココとココに砲台を置けば十字砲火で一網打尽だぜグフフ」と舌なめずりしつつ敵が近づいてくるのを待つのがTDの愉悦だ。少なくとも管理人はそう考えている。
 だがCastleStormは地形などないも同然、砲台もひとつだけときているので、普通のTDのような「待ち」のシチュエーションはほとんどない。言い忘れたが敵の城もこちらと同様にバリスタでガンガン攻撃してくるので、ますます撃たれる前に撃てという要素が強く出る。陳腐な言い方だが「攻撃こそ最大の防御」が本作を貫くテーマといえる。

■つまり
 CastleStormはタワーディフェンスというよりタワーオフェンスといった方がしっくり来る。
 XBLAで出ている『Anomaly:Warzone Earth』など実際にそう評されているゲームもあるが「自分のタワーを守りつつ相手のタワーを落とす」というコンセプトはTDの対戦プレイに近い。だがそれでも「タワーとタワーが直接攻撃の応酬をする」というゲームは多くないように思う。これはもはや攻城戦というより「城と城の殴り合い」という表現の方が正しいだろう。
 なんで矢が届く位置に敵の城が建ってんだよと突っ込みたくもあるが、矢で敵兵をハリネズミにしたり爆弾をぶつけたり、城壁にトゲ付き鉄球を撃ちこんで倒壊させるのはとても楽しい。
 もちろん敵もこちらと同じように攻撃してくるので、ステージ全体に気を配りつつ戦い方を考えねばならない。敵兵を蹴散らすのに夢中になっていると城本体がボコボコにされ、出撃可能なユニットが減ってしまう。かといって敵の城だけを標的にしていると、敵兵に城門を破られて旗を持ちだされてしまう。シューティング寄りとはいえ、戦場全体を見据えての判断が求められるあたりはやはりTDだといえるだろう。


■話は変わるが
 本作で地味に好印象なのが、キャンペーンモードがちゃんとストーリー仕立てになっている点だ。「王国へ侵攻してくるバイキングの軍勢との戦い」という背景設定に基づき、個性豊かなキャラクターたちの寸劇を織り交ぜて物語が展開していく。
 TDにストーリーなど要らんというストイックな人もいるだろうが、やっぱりキャラクターがいると何となく親しみがわくではないか。ゲームの中身は瞬間の判断と素早く正確な操作が要求される忙しいものだが、登場人物たちのやり取りはユーモラスで、せわしない戦闘の息抜きとして作用していると感じる。



主人公側の登場人物


 左から2番目の騎士が主人公の「ガレス卿」。若干脳筋気味ではあるものの陽気で頼れるタフガイだ。
 それにしても安定のオッサン率。流石は洋ゲーというべきか、ポップな絵柄であっても「戦場に女子供が出る幕はない!」と言わんばかりのマッチョイズムが漂っている。やっぱり戦争ゲームはこうじゃないとなグハハ!

 と思っていたら、中盤で女の子が登場して驚いた。



フレイヤちゃん



適当な画像が見つからないので絵で代用。



 敵であるバイキングも一枚岩ではなく、首領に反旗を翻すレジスタンスが存在することが劇中で明かされるが、そのレジスタンスの側のキャラクターである。まだうら若い少女ながら、ガレス卿と同様に一定条件下でプレイヤーが操作する“英雄”ユニットとして戦ってくれる。
 ぱっと見だとワイルド系なアホの子に見えるかもしれないが、言葉遣いもしっかりしたお嬢さんです。一部のカットシーンで、ですます調だった口調が唐突に男言葉に変わるが、これは多分翻訳担当のミスだろう。

 中盤以降はこのバイキング娘がヒロイン的な立ち位置になり、それまで兵士と蛮族とモンスターと魔法と各種投射武器で埋め尽くされていたCastleStormの世界にわずかながら潤いを与えてくれるのだ。

 具体的にはアレだ。Bボタンで出せる投射武器の警戒指示。いつもならガレス卿が野太い声で「Incomiiiiiiiiiing!!!」と叫ぶことでフィールド上の兵士が地面に伏せるのだが、いくつかのステージでは彼女が「いんかみ―――ん!」とか「ていく・かば――!」と可愛い声で警告する。たったそれだけだが妙に和み、「たまには戦場に女の子がいてもいいよね!」という気になるから困ってしまう。

 もうね、その気になればこの娘を主人公にして萌え漫画出せますよ。バイキング娘のほのぼの日常漫画ってノリで。タイトルは「ばり☆すた」でどうかな(←それ言いたかっただけだよね)。


 肝心のストーリーについては、大団円と思いきや急展開して打ち切り漫画みたいな終わり方をするのが難点だが(結構シブい終わり方で管理人は好きだけど)、できればストーリーをフォローするような追加キャンペーンが欲しいところだ。回収してない伏線もあるしね。
 DLCのリリースもすでに予定されているようだし、なるべく早い展開を希望したいところである。


■というわけで
 CastleStormは大いにオススメだ。「待ち」がないゲームデザインもあいまってテンポが早く、短い時間でサクサクとプレイできるのも忙しい現代人には向いている(そのせいで予想以上に時間を費やしてしまうのだが)。
 何より2DベースのTDという風変わりなゲームというだけでも触れる価値はあるだろう。「3次元に興味はありません」と言って憚らない真性2次元コンプレックスの人はもちろん、「たまには2次元もいいよね!」という2次オタ予備軍の人もきっと気に入ると思う。



追記:
 現在はサバイバルモードなどを遊びつつDLCを待っている状況なのだが、基本のシステムが良いだけに続編にも期待せざるをえない。具体的には舞台を第一次世界大戦に移したキャッスルストームならぬフォートレス(要塞)ストームがやってみたい。
 戦車や航空機など新兵器が続々と登場したWW1だが、戦場で最も猛威を振るったのは急激な進化を遂げた「砲」だった。これは射撃中心のゲームシステムともなじむだろうし、城に類する要塞が大きな戦略的価値を持っていた時代という意味でも見逃せない。
 ToySoldiersでいいだろ!と言われるかもしれないが、たまには2次元でWW1やったっていいじゃん!



※過去のタワーディフェンス更新
雑文その154・Toy Soldiers:Cold War――狂気の時代のおもちゃ箱



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