11.08/12 雪女・3
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雪女郎 まなこの底の蒼かりし
  ――西村和子


 雪女のイメージカラーは白。異論はないね?
 純白の処女雪を思わせる白い着物こそ、ビジュアル的に雪女を雪女たらしめている最も重要なパーツなのだ。白い装いは花嫁衣裳も想起させるし、美女が身に纏う色としてしっくり来る。いや男が着てもいいけどね。『狼/男たちの挽歌・最終章』ラストのユンファとか、『マトリックス』のツインズとか様になってるし。
 思えば『シグルイ』でも劇中で着物の色が消え、死装束のごとき白い装いになる描写が多かった。思うに白とは黒と並んで彼岸と此岸を繋ぐ……ごめんこれはどうでもいいや。

 古い絵画に描かれた雪女は白い着物に黒髪、黒い瞳とシンプルな出で立ちだが、最近だとベースは白に保ちつつも髪の色が青だったり紅い瞳だったりとバリエーションに富んでいる。
 ひとつの推測として「厳かな雪の化身」という以外にも雪女のキャラクター性が多面的に――より身近になったり、萌えの対象になってきたことが関係しているのではないかと思う。
 雪女を詠んだ俳句の中から、色に関するものを二首挙げてみよう。


雪をんな 襦袢は真紅かも知れぬ
  ――山元志津香


下穿きも みなくあれ雪女
  ――瀬川耕月


 半透け襦袢って色っぽくていいよね雪女の“内側”にあえて赤い色を求める感性には引かれるものがある。冷厳として人を寄せ付けぬ美女は、その心底まで氷雪のごとき存在なのか? だとすればなぜ、人里に降りて人間の男と情を交わしたのか? その理由として内に血のような、あるいは火のような何かを持っていたのだとすれば、「赤い襦袢」が秘めやかな心の一面にも思える。
 下着の色としては白がベストというかそれ以外ありえないと思いますが。「雪女っぽく青いストライプの下着とかいいんでない?」とか言ってる奴は管理人とチェーンデスマッチだな。他はともかくこれだけは絶対に譲らん。

 ただ現代のサブカルチャーにおいては、雪女は「はいてない」という認識も少なからずある。着物だからという見方もあるが、PSで出た対戦格ゲー「ライトニングレジェンド」の銀雪(しろがね・ゆき)などは公式でそれをやってのけた。




 明るいポップな絵柄からに反して結構マニアックじゃないスかねこれ。最もこのイラストレーターはその後「ナムコクロスカプコン」や「無限のフロンティア」などでもキャラデザを担当し、エロ可愛い路線をさらに推し進めてファンを獲得しているが。

 いわゆる「はいてない」と「パンチラ」のどちらがより尊いかという論議にはそれだけで更新複数回を費やす価値があるが、それはまたいつかに回そう。
 話を戻して雪女と「赤い色」についてだが、伝承の中には雪女の処女性にからんだ「赤い雪」の話がある。



また二十歳前の美女姿で現れるのは、雪の純白さから清浄無垢の処女という観念が生まれ、処女が性に目ざめ、異性を求めるために現れるとも考えられていた。甲斐地方の古い伝承では、雪女が山婆の垂乳と経血を笑ったので山の神の怒りにふれて、紅い雪が降るまで処女でいなければならぬことになり、やがて紅い雪が降ると男と通じて子を生み、やがて垂乳となって溶けて消えていくと伝えられる。
――笠間良彦「日本未確認生物事典」



 フランスではエジプトから風に運ばれた赤い砂が雪に混じり、ほのかに赤い雪が降ることがあるという。日本でも極めて稀だが赤い雪が降ったことがある……とこの伝説の中にはある。
 それにしても「処女が性に目ざめ、異性を求めるために現れる」とはずいぶん斬新な説のように思える。雪女は『怪談』以外の話でも子供を抱いて現れたりなど、わりと「子持ち」なイメージが強いのだが。

 さぁ果たして雪女は処女なのか? 個人的にはどうでもことだが、萌えカルチャー界隈ではその人物の評価を決定するほど重要なファクターなのはよく知られている。雪女をメインヒロインに据えた18禁ギャルゲー『瑠璃色の雪』では、雪女の「瑠璃」が実は雪女と淫魔のハーフという設定だったそうで、処女と信じて疑わなかった一部ユーザーの心に傷を負わせたという話がある。

 いろいろと謎は深まるばかりだ。もし知り合いに雪女がいればぜひ聞いてみたいところですなハハハ!







 ま、謎は謎のままにしといた方がいいこともあるよね!


追記:
 今ならもう残暑見舞いじゃねーの? と突っ込んでる諸兄へ。管理人のルールでは8月一杯は暑中見舞いでオッケーです。文句あっか。




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