12.05/17 その172 ゾンビ映画のススメ――ザ・ホード 死霊の大群





「分かってるんだろ? お前が来たのは――俺たちと同類だからだ。
 前線にいたいからだ。殺しをすると興奮するからだ」


――ザ・ホード 死霊の大群


 最近またゾンビ映画を借りましてね。
 上の引用にある『ザ・ホード 死霊の大群』(2010)なんだけど。




予告(Youtube)


 以前の更新で触れた「興味はあるけど観るのはためらうゾンビ映画」のひとつで、「どんくらい怖いのか教えて!」とワガママを言ったところ、掲示板にてホラーレベルとアクションレベルを教えていただいた。それによればスプラッター低め、アクション多めとのことだったので、これなら自分でも観れるかも…と思いレンタルに踏み切った。
 ゾンビランドやショーン・オブ・ザ・デッドはゾンビものとはいえコメディというくくりだったが、ザ・ホードはれっきとしたホラー(+アクション)映画。こういう「ホラーとしてのゾンビもの」を自主的に借りて観たのは人生初の経験である。

 で、感想! あんまり怖くなかった!(←晴れやかな笑顔でサムズアップ)
 警官とギャングがゾンビだらけのビルから脱出するという呉越同舟なホラーアクションなわけだが、全体的にアクション成分が濃厚、かつマッチョと悪党がいい感じでブレンドされており、怖さを和らげてくれていた。
 ホラーもので何が堪えるかって、肝心のモンスターもさることながら「怯えて取り乱す人」の描写がかなりつらいのよ。恐怖に歪んだ顔というのはそれだけで恐ろしいものだし、大げさに怖がられるとこっちまで怖さが伝染する。特に女性のカン高い悲鳴はそれだけで脳にダメージ。恐怖に立ち向かう心も萎えてしまう。
 そこへいくと『ザ・ホード』は暴力を生業にしている方々(一部偏見あり)がメインなので、ビビって泣き叫ぶような人はいない。銃器もデフォルト装備なので、とりあえずブッ殺すという方向になるのも精神衛生上たいへんよろしい。「逃げるしかない恐怖」ってのもすんごいメンタルを蝕むからね。




ギャングmeetsゾンビ


 こういう絵面ってすごく好きなんですよ。
 いわゆるゾンビものには一人くらいワルそうな荒くれが混じっているイメージがあるが、この映画ときたら9割くらいがそんな感じです。血も涙もない極悪なギャングと、復讐のためならギャングくらい殺してもいいだろって暴力警官。そんな奴らがやむなく共闘する中で熱き男の友情が!芽生えたりは全くしない。ひたすら殺伐とした暴力的な空気が全編を貫いている。
 そんな中で一服の清涼剤になっているのがこの人。



 映画の舞台となるビル(一応マンションらしい)の一室に居を構えるじいさんで、名前はルネ。ベトナム戦争に従軍していたというから結構なお年だろう。そのくせ異常事態にいち早く適応し、ゾンビ狩りを行っているから元気なものだ。返り血を浴びた顔で笑う様はサイコパスっぽくて怖いが、ユーモラスな人柄は映画中盤以降のギスギスした空気を和らげてくれる。
 シリアスな主人公らと違って終始ノリノリでゾンビ殺しに興じるその姿は、視覚的に楽しませてくれるという意味ではラブコメにおけるお色気お姉さんの立ち位置に近い。軽機関銃をブッぱなして大暴れというサービスシーンもあったし、視聴者の需要にしっかり応えてくれる良キャラだった。ギャング連中も自分らの足元にこんな物騒なジジイが住んでいたとは夢にも思わなかったろう。
 ちなみに本更新冒頭の「お前がここに来たのは俺たちと同類だからだ」という台詞は彼のものだったりする。殺人という快楽を自覚した、歪な陽気さがこの人物の持ち味だろう。やっぱり元気な年寄りがいると雰囲気が明るくなるよね。





バーサーカーおじいちゃん


 それと感心したのがこの映画、思いのほか肉弾アクションに気合いが入っている。
 この映画のゾンビはいわゆる走るタイプで、ショットガンを食らってもまだ向かってくるくらいタフで凶暴な奴らなのだが、このゾンビをステゴロでぶちのめすシーンがいくつかあるのだ。中でもヒロイン(女性警官)が女ゾンビとタイマン張るシーンは素晴らしい。殴る蹴るはもとより頭を掴んで頭突きをかましたり灰皿でブン殴ったり(ステゴロじゃないの?)、バイオレンス全開のラフファイト。両方とも細身の女優なのに、動きがすげえワイルドで真に迫っている。
 ていうかこの女性警官、アクション面では一番カラダ動いてたような気がするな。終盤では「え、それクラヴ・マガ?」と思うような瞬殺テクを見せたりするし、近接格闘で殺したゾンビの数では多分一番じゃないだろうか。結構カッコいいぞねーちゃん。パッケージからは伝わらないけど。



 この画像を見て「なんか顔怖くない?」と思った人は管理人と近い感性の人。
 「乳首浮いてるね(^−^)」と思った人は……どんな逆境にあっても人生の美しい部分を見つけられる心の持ち主だろう。L4D2のトレーラーでスピッターの乳首が浮いてることを発見した人は間違いなく後者のタイプ。


 話を戻そう。
 この肉弾アクションが最高潮になるべき場面として「一人でゾンビの大群を食い止める」シーンがあるのだが、非常に惜しいことにここの役者はヒロインの女優と比べてあまり体が動いていない。というか、あのシーンは全体的にもっと良くできたんじゃないかなぁと管理人は残念に思う。シーンだけを切り取るとインパクトあるんだけどね。




エブリバディダンスナウ


 とはいえ、総評としては管理人のようなタイプにうってつけの爽快なバイオレンスアクション映画だったといえる。
 舞台がビル(マンション)内限定ということもあって、タイトルの大群(Horde)を相手取るシチュエーションが少ないのは残念だが、廃墟のような建物内はダンジョンめいたドキドキ感があるし、対立する警官とギャングがそれぞれ内部に不協和音を抱えていたりと、ストーリーも一筋縄ではない。
 いろんな要素を詰め込んでいるにも関わらず、ゾンビもホラーも苦手な管理人が一気に観終えてしまうくらいのパワーがあった。……誰ですか、「どうせ軽機関銃でゾンビをミンチにするシーンがあれば満足なんでしょ?」と穿った見方をしてる人は。まぁ確かにあのルネ無双で+20くらい加点してるけど。



追記:この映画で学んだこと

・フランス警察はヤバイ
・フランス女はヤバイ
・高層マンションもヤバイ
・近所のお年寄りと仲良くしよう
・弟はいじめてもよい



※過去のゾンビ更新
雑文その169・ゾンビは友だち、怖くないよ! 殺すけど!
雑文その168・アメコミのススメ――『ウォーキング・デッド』
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雑文その102・Left 4 Dead 2――ゾンビを憐れむ歌
雑文その100・Left 4 Dead 2――今夜はシュート・イット

※過去の映画更新
雑文その159・アメコミ映画のススメ――バットマン・オリジナルムービー
雑文その155・対独爆撃部隊ナイトウィッチ――乙女たちの挽歌
雑文その118・Snoopy Flying Ace――ちょっと映画の話もね
雑文その114 360ユーザーならGWは映画観て過ごそうぜ!



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