06.05/14 魏延 文長
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 三国志における「反骨(叛骨)の相」とはいかなるものか。
 否応なく警戒心を呼び起こすような、異様に凶悪な面構え…というわけではなく、骨相に見られる特徴のひとつらしい。なんでも後頭部にでっぱりがあるのが「反骨の相」だそうで、この相を持つ者は主君を裏切るものとされている。宇宙生物でいえばH.R.ギーガーのエイリアンが当てはまる。
 仮にそれで裏切られたとしても、反骨がどうのではなくこんなのを召し抱えた主君に絶望的に見る目がなかったということで落ち着きそうだが。エイリアンも見る“眼”はないがね!あっはっは!!



 魏延の「反骨の相」のエピソードは、彼が自分の主君・韓玄を裏切って劉備陣営に参じた際、孔明が言った言葉による。以下、吉川三国志より抜粋。

「今、私が魏延の相を見るに、後脳部に叛骨が隆起しています。
 これ謀反人によくある相であります」

 後々叛くに違いありませんので、今、誅を加えて禍いの根を絶った方がよろしいかと云々。
 反骨のエピソードは後世に創作されたものだが(正史にはそもそも魏延が主君を殺したという記述がないとか)、この二人不仲だったというのは定説のようである。それに加え文官の楊儀という男も、孔明に劣らず魏延と険悪な関係だった。後に蜀における主導権争いを演じて互いに相手を謀反人呼ばわりしたりと、深刻な火種を抱えていたようだ。平時から楊儀とその取り巻きとの間で

 「えーマジ反骨!?」
 「キモーイ!」
 「反骨が許されるのってロッカーだけだよねー」
 「キャハハハハハハ!」

 なんていう会話が交わされていたのかもしれない。ごめん。適当なこと言った。
 さて、魏延と言う男、劉備に忠誠を誓っていたり後に五虎将となる黄忠を救い出したり、 その後も蜀の武将として立派に務めたりとなかなかに活躍していたのだが、孔明と仲が悪かったが ために後世「反骨」という属性を与えられ、悪役一直線に進むことになった。
 ラストはあっけなく首を刎ねられて死ぬわけだが、その直前に因縁の相手である楊儀と舌戦を 交わすというおいしい場面が用意されている。以下、吉川三国志より抜粋。



「魏延!野望を持つのもいいが、身の程を量って持て。一斗の瓶へ百斛(ひゃっこく)の水を容れようと考える男があれば、それは馬鹿者だろう」

「おっ、おのれは楊儀だな」

「口惜しくば天に誓ってみよ。――誰が俺を殺し得んや――と」

「なにを」

「――誰が俺を殺し得んやと、三度叫んだら、漢中はそっくり汝に献じてくれる。












「三度はおろか何度でもいってやろう。

 誰か俺を殺し得んや。――誰か俺を殺し得んや。――おるなら出て来いっ」




 あわれ、魏延は三度言い終えるうちに、それまで味方として陣中に潜んでいた馬岱によって討ち取られる。
 …プレデターをモデルにしたせいで異様に凶悪な面構えになってしまったが、ここまで書いてきたように魏延はドス黒い野望を秘めた悪党ではなく、むしろ実直な武人である。少なくとも酒に溺れて守るべき城を取られた某虎ヒゲにくらべれば、人格的にもはるかに常識人でもある。

 管理人は基本的に悪党が大好きであるが、彼の場合は董卓や曹操などと違い、実績(例:洛陽における暴虐/徐州の大虐殺)が伴わないまま悪名だけをかぶせられてしまった感があり、少々気の毒に思える。孔明をヒーロー的に脚色する上での犠牲者なのかもしれない。


■参考
用語集か行→【魏延】
用語集は行→【反骨】


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