話題のバイオレンス映画「シンシティ」がいよいよ公開である。
ブルース・ウィリスをはじめとするスターが多数出演していたり、原作者が監督に加わっていたりと話題はさまざまだが、諸般の事情により管理人はまだ映画館に足を運べていない。その代わりというわけではないが、この「シンシティ」原作のアメコミを手に入れた。
シンシティとは同名の街を舞台にした連作シリーズで、映画は1作目の「ザ・ハード・グッドバイ」、3作目「ザ・ビッグ・ファット・キル」、4作目「ザット・イエローバスタード」をオムニバス形式でつないだものらしい。
で、入手したのは記念すべき1作目…というかコレしか刊行されていないらしいが…「ザ・ハード・グッドバイ」である。
暴力を生業にしてきた街のゴロツキ、マーヴィン(マーヴ)が、一夜を共にした娼婦・ゴールディの仇を討つという筋書きだが、これがなんとも強烈な作品だった。
陰影を際立たせ、光と影のみで描写する独特のビジュアル、ハードなバイオレンス描写、孤独な男の苦しみと戦いを追うストーリーなど、見所が非常に多い。
なかでも主人公・マーヴの造形が魅力的だ。
醜い顔をした筋骨たくましい巨漢。荒事が大の得意で、凶暴かつ残忍。おそろしくタフだが、決して恐れ知らずではない。ゴールディの仇を探すうち、予想もしなかった大物が背後にいることを知った彼は、恐怖を覚えつつも最後まで戦うことを決意する。彼の「戦う動機」はストーリー序盤の会話の中ですでに語られている。
「また監獄に戻りたいの? あの地獄に? 今度は出られないわよ」
「地獄だぁ? あんたなんざに何がわかるってんだ。いいか、下種な看守どもに殴られようがどうされようがそんなモンは地獄でもなんでもねぇ。ホントの地獄ってのはな、毎朝毎朝、後悔しながら目を覚ますコトなんだよ。どうしてまだ息をしてんだとな」
愛を誓い合った恋人などではない。たった一晩だけ付き合った、それこそ名前しか知らない女のために、そして自分自身のために、男は命を捨てて戦うことを選ぶ。小説「ビッグ・ノーウェア」におけるバズ・ミークスの言葉を借りるなら、まさしく「愚かしくて、とち狂っていて、センチメンタルで、まさしく狂気の沙汰」な物語だ。このハードさが、モノトーンのビジュアルとじつによくマッチしている。
映画版もこのコミックのビジュアルを徹底して再現しているそうで、色合いはもちろん、カメラのカットまでコミックのコマ割りを意識したつくりになっているそうだ。
コミックをまんま実写に、という手法は確かに面白そうではあるが、イロモノ(モノクロだけど)的作品になってしまわないかと少々不安でもある。ま、早々に観にいくとしよう。
追記1:
この「ザ・ハード・グッドバイ」はかなり前に翻訳・出版されていたらしい。今回の映画化に伴って再び発刊されたということらしいが、昔も今も2作目以降のシリーズはスルーされたままである。
映画シンシティがヒットし、全シリーズが翻訳されるのを管理人は期待している。
追記2:
それにしても最近はアメコミの映画化が多くて、個人的にはかなり嬉しい。アメリカでは来年夏に「ゴーストライダー」が公開されるそうで、そのうち映画でもAVPみたいなクロスオーバーものがどんどん出てくるかもしれん。
血が騒ぐぜ!
■参考
用語集は行→【バズ・ミークス】
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