本・映画[1]へ  
15.03/18 その220
Battlefield:Hardline――悪党たちの夜明け前






 さぁ、そろそろ例の銀行強盗ゲーの発売まで秒読み段階だが、みんな強盗の準備はできたか? いやPayday2じゃねぇよ。そのマスクは置いてけ。耐爆スーツもダメだ。PS4の『Payday2:Crimewave Edition(海外版)』は6月予定ってこの前言っただろ。
 なに、6月は『夏色ハイスクル★青春白書』でパンチラ撮るのに忙しいって? いやそっちもクライムアクションには違いないが、もっとこう、バトルにふさわしいフィールドがあるじゃん。FとかPとかSが付くジャンルで。


 そんなわけで『BattleField:Hardline』の話なのだが、まだ先だと思っていたらいつの間にかもう明日が発売日。この間オープンβが終ったばかりという認識だったが、時の経つのは早いものだ。

 もちろん管理人もβに参加し、いつも通りのヘッポコ三等兵ぶりを全世界に開陳していたのだが、最終日はすごくヒロイックなプレイができたので聞いてほしい。
 銀行強盗モード「Heist」の最終局面で、ブツ(ゲンナマ入りのバッグ)の回収ポイントであるビル屋上で熾烈な銃撃戦が起きていたわけよ。管理人は窃盗団の一人として向かいのビルからチマチマ援護射撃していたのだが、力及ばず窃盗団が一掃され、ブツが放置状態に。このままSWATチームに奪われるのを見ているしかないのか? 助けてバラクラえもん! 「はい! ジップラインランチャー!




 まあ実際は脳内会話などしていないが、ジップラインランチャーを持っていたことを思い出したので、すかさず向かいのビル屋上に撃ち込んだ。そしてつい――っと移動し、運よくよそ見をしていたSWATチーム3名を射殺、ブツを拾って回収マーカーにタッチダウンし、見事チームを勝利に導いたわけですよ。

 あの時のプレイはここ数年のBFライフで一番輝いていたね。グラップリングフックでビルの壁(ガラス張り)をよじ登っていたら中の敵から丸見えで、ショットガンで壁ごとぶち抜かれて死んだりとか面白プレイもいっぱいしたけど、全て報われた思いだったね。


 そんなわけでBFHを買おうという決意を新たにしたわけだが…このゲームについていまだに疑問を抱いていることがある。
 ブツの回収はいいとして、俺らみたいな現場の“兵隊”の回収はどうなっているのか? 周りにSWATがひしめいてるし、市街地も封鎖されてるから個別に逃げるのは不可能だよね? …後からヘリが戻ってきて俺たちもちゃんと回収してくれるんだよ…ね? 頭数減ったらそのぶん分け前が増えてラッキーとかそういうことはないよ…ね?
 ここを考えると不安で昼寝もできなくなるが、多分、なにか方法があるのだろう。あるに決まってる。

 まぁゲームプレイ部分に関して言えば『Battlefield:Hardline』は真っ当に楽しめる出来だと思う。
 オープンβの「Heist」ルールは乗り物がないこともあってCODっぽいと言われてもいるが、「金庫からブツを奪って回収ポイントに運ぶ」というルールはきっちり連携が求められ、その意味ではちゃんとBFしている。さらに上で挙げたようにジップライン、グラップリングフックといった移動系ガジェットを上手く使えば、従来の歩兵戦にはない戦術も可能になるだろう。

 まぁ手放しで絶賛できるかといえばそうでもない。大規模戦闘という意味では良くも悪くも「いつものBF」であり、警察vs犯罪者という独自性がそこまで出ていないのは多少残念ではあった。というかこれだけの人数で銀行を襲撃となると、もはや銀行強盗というより武装集団の略奪行為ではないのかと思わずにはいられない。GTAのようなクライムアクション以上に「ここは本当にアメリカなのか?」という気分にさせられる。

 強盗ゲーのパイオニアである『Payday2』はゲーム的な割り切りをした上で“銀行強盗をいかにゲーム化するか”に心を砕いていたが、BFHはそのへんの努力をハナから放棄し、開き直って“戦争ごっこ”のノリをそのまま持ち込んでいる。
 例えばステージ開始直後の様子を比較すると、Payday2の場合は静かなものである。一般人を装ってロビー内の様子を探ったり、裏から回り込んで監視カメラを壊したり、警備員を無力化したりする。最終的には警官隊とドンパチになるとしても、少なくともスタート時は犯罪行為ならではの密やかさ、ゾクゾクするような高揚感がある。

 だがBFHにそんな情緒はない。
 敵も味方も開始と同時に┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨と金庫に殺到し、接敵するや否や銃口が火を噴きグレネードが炸裂するという激戦に発展する。
 管理人の体感だと、Payday2で開始から銃撃戦が発生するまでの時間は大体3〜5分以内だが、BFHは20秒以内に死人が出る。そもそも銀行内に一般市民などがいないため、ステルスのスの字も見当たらねぇ。ス? ああ、スティンガーのスね! って感じだ。


FIM-92スティンガーミサイル


 BFHはスカーフで口元を覆ったギャングやグラサンの私服警官などこれまでにないキャラクターが登場するが、そいつらの背中のファスナーを下ろせば見慣れた兵隊連中が出てくるに違いない。
 流石に武装は軍隊より控えめで、従来デフォルト装備だった軽機関銃やロケットランチャーはバトルピックアップ(マップ内に設置されているオマケ武器)扱いになっているが、アサルトライフルやサブマシンガンで武装した人間が数十名規模でぶつかり合うとなると、これはもう単なる銃撃戦ではなく市街戦である。
 なお警察側も周辺市街地を封鎖し、容疑者の射殺許可を出すなど殺す気満々でかかってくるが、もう軍隊呼んだ方が早いだろと思わなくもない。まぁBF世界の軍隊は第3次世界大戦で忙しいだろうからしょうがないね。

 今回DICEに代わって制作を担当したVisceral GamesはBFを再現することには精力を注いだようだが、「銀行強盗のゲーム」を作ることにはあまり熱心ではなかったということだろう。

 クライムアクションとしてはテキトーもいいところだが、ここまで突き抜けていれば一周してアリかなと思えるから不思議なものだ。何もかも型破りというかムチャクチャなのに、金庫から奪うブツが現金入りのバッグと古典的なのも笑える。しかもバッグを運ぶ時にはあふれた紙幣がヒラヒラこぼれ落ちるというわざとらしさ。狙ってやってるとしか思えない。
 “運び屋”になった仲間を護衛するのはゲーム中でも特に熱の入る場面ではあるが、ヘンゼルとグレーテルよろしく紙幣をまき散らしながら走る仲間を見ていると妙なおかしさもこみあげてくる。





 出現率1万分の1と言われる面白リロード爆走ドライビングソファもそうだが、BFHはおふざけ的な要素を積極的に取り入れているようだ。こういうノリはBFBC以来で、あのゲームの雰囲気が大好きだった管理人としては素直に嬉しい。

 だが…この銀行強盗でゲットすべきブツが現金入りのバッグ(×2)だけというのは驚くべきことである。武装した荒くれをウン十人も送り込み、ヘリまで投入しておきながらPayday2の銀行強盗ミッションよりも少ないゲンナマで儲けが出るのだろうか。普通なら参加して生き残った奴らにも成功報酬が支払われるはずだが、それをバッグ2つ分のゲンナマでまかなえるかどうか、正直かなり怪しいと思う。
 ひょっとすると投入した人員は全て見殺しということで、彼らの取り分は最初から計算に入っていない可能性もある。

 あるいは、BFHの窃盗団は最初から使い捨てを前提に集められたのかもしれない。彼らがそれを承知で仕事(ヤマ)に加わったのなら、おそらくやむを得ない事情があったのだろうと推察される。
 例えば恋人を人質に取られているとか、病気の娘の治療費を肩代わりしてやるとか、弱みに付け込まれて犯罪計画に加担したのだとすれば、バラクラバから見える眼差しの中に、どこか哀しげな光が宿っているようにも思える。



哀しげな眼差し



サイコパスの眼ですね



 もちろん、この仕事を受ける際に契約内容をちゃんと確認しなかっただけという可能性もなくはない。「今日ヒマ? 銀行強盗やるけど、来る?」「行く行く!どこ?ロス?」くらいのノリで。分け前の取り決めとか脱出の手順とか全部忘れたまま銃だけ持って現地集合みたいな。
 スポットの際に中指をおっ立てたりとノリが軽いあたり、その可能性の方がはるかに高い。

 結論:窃盗団はアホの子。



追記:
 上の報酬云々は設定的なヨタ話だが、ゲーム中のシステムにしぼって話をすれば犯罪者連中はプレイ内容に応じて「キャッシュ」が得られる仕組みになっている。新しい武器やガジェットを使うには、条件によるアンロックに加えてキャッシュで購入する必要がある。
 過去に『Call of Duty:Black Ops』でCODポイントという同様のシステムが導入された時は単なる足かせにしか感じず印象が悪かったが、BFのようなクラス形式のものとは相性がいいかもしれないと思っている。

 前作のようにクラスごとのEXPで順次アンロックという方式だと不得手なクラスは成長が遅くなるが、キャッシュ購入なら「得意なクラスで稼いで他に回す」という形で多少フォローできる。武器にせよガジェットにせよ、どれを優先すべきか自分で選べるのもメリットだ。
 ただ、銃などは警察側と犯罪者側で個別に買わねばならないのは困りものだ。無計画に買い物してると警察側の装備だけ充実し、犯罪者側は初期状態のままなんてことも起きかねない。

 このあたりは「警察の装備」と「犯罪者の装備」をきっちり分けたことによる弊害だと思うが、双方でちゃんと個性がついたこと自体は歓迎したい。前作では米軍もロシア軍も中国軍も、突撃兵の初期装備がAK-12で統一されていたりと不自然さがあったが、BFHでは警察側は焼夷手榴弾なのが犯罪者側は火炎瓶だったりと、ちゃんと個性が出ているのだ。
 警察も犯罪者もやたらと軍隊くさいBFHだが、異なる目的と美学を持つ集団をちゃんと色分けしようと試みているあたりは評価してもいいだろう。
 できれば犯罪者側ももうちょっと身なりをカスタマイズしたい。まぁ一人称視点じゃありがたみ薄いのは分かってるけどさ。






洋ゲー[2]へ   TOPへ戻る