ただ、小説だと今も普通に使われているようだ。いや官能小説じゃなくて冒険小説とか犯罪小説とかそのへんね。今読んでる『強盗こそ、われらが宿命』でもヒロインのパンティが彼女と主人公を結びつけるちょっとした小道具として出てきた。
このヒロインは銀行の支店長(30歳)というキャリアウーマンなわけだが、この場合やはり「パンツ」や「ショーツ」だと様にならない。パンツではちょっとくだけすぎるし、ショーツだと生活臭が強く出てしまう。美人のお姉さんの下着は「パンティ」でなくては締まらないと管理人は思う。
漫画やラノベ、アニメといった若年層を対象にした媒体でこの言葉が敬遠されるのもそこに一因あるのではないだろうか。それらの媒体におけるヒロインは大抵が未成年であり、大人の色香とはあまり縁がない。それを思えば「パンツ」という最大公約数的な呼称が一番しっくりくるのだろう。
とはいえ想像だけでモノを言うのもアレなので、「本当にラノベ等ではパンツの呼称が一般的なのか?」とGoogleで検索してみたが……一番上に出てきた
『パンツブレイカー』(一迅社/神尾丈治)というラノベの紹介記事を見て頭を抱えたくなった。以下があらすじである。
「半径2メートル以内に近づく者の下着を消し去る」前代未聞の能力“パンツブレイカ―”を持った少年・汐正幸。(中略)正幸の能力に興味を持った天才少女・姿影那はその力を解明しようとするが、影那に恨みを持つ者が襲いかかる! ノーパン異能学園ラブコメ発動!?
オゥ、ファッキンシット(ふざけたクソッタレめ)。
管理人は何が嫌いかって、パンチラより“はいてない”をありがたがる連中が嫌いなんだよ。処女崇拝者と縞パン至上主義者の次にな。
今回の一番上の絵も、
前回の絵で「はいてない疑惑」を持たれたことへの釈明という意味が大きい。
ただ管理人は蒙昧な原理主義者ではないので“はいてない”を全否定はしないし、何より読みもしないで作品にケチをつけるのはよくない。
そもそもこの主人公は
リアルでパンチラに遭遇することが絶対にないわけで、そのような呪われた宿命を背負っていかに生きるかがテーマなら、X-MENさながらのドラマも期待できよう。ていうか「パンティブレイカー」ならまだ許せたな。
そんな感じでラノベ情報をつらつら見ているともうひとつ
『ぷいぷい5!』(MF文庫/夏緑)という作品のレビューが目に入った。
「ランプの魔神」に着想を得たラブコメらしいが、レビューサイトの管理人さん曰く
「作者が「パンティー」と「ショーツ」と「パンツ」の違いを熱く語ってくれます」とのこと。以下抜粋。
けっして「パンティー」ではない。それは布が少なく、なおかつレースがひらひらとついた、軽佻浮薄で華麗なる下ばきを連想させる。かといって「ショーツ」でもない。それは全く無駄な装飾を排除し、機能のみを追求し、体に完全にフィットしたスポーティな下ばきの名称である。
作者にとっては「パンツ」>「パンティー」=「ショーツ」だそうです。パンツにはオトナになろうとする少女の夢と憧れがつまっているそうです。
気持は分からんでもありませんが変態ですな。
ファッキン・アスホール(たまげたケツの穴だぜ)。
パンティーとショーツの分析は見事なものだしこの手のこだわりは嫌いではないが、「パンツ」がより良いとするその一点においては世界が覆っても分かり合えないと感じる。
ちなみにレビューしている管理人さんは
「私は「パンティー」>>>>越えられない壁「ショーツ」=「パンツ」です」とのこと。
志を同じくする人を見つけたことは、管理人にとってわずかながら慰めになった。この方も、ひとつの言霊がその輝きを失いつつあることに哀愁の念を感じておられるのだろうか。
時の流れと同じように、言葉もまた流転してゆく。新たに生まれ広がっていく言葉があれば、忘却され歴史の片隅へと追いやられる言葉がある。しかし「死語」の烙印を押された言葉にも、その時代を生きた人々の思想が、価値観が、想いが宿っている。その言葉でしか語れなかった物語がある。
それすらもやがて忘れ去られていくのか、あるいは伝説として語り継がれていくのか。それを選択できるのは同じ時代を生きた我々以外にない。それならば、せめて愛した言葉を忘れずにいたいと思う。
いつか物語が伝説に変わるその日まで。
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