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14.10/16 その211
もう夏だし恐怖でも克服するか2014





Mama and papa were layin' in bed
(ママとパパはベッドでごろごろ)

Mama rolled over, this is what she said
(ママが転がりこう言った)

Oh,give me some
(“お願い 欲しいの”)

Oh,give me some
(“お願い 欲しいの”)


P.T.!
(“しごいて”)

P.T.!
(“しごいて”)










 管理人は毎年夏になると恐怖の克服を思い立つのだが、今年もその季節がやってき……なに、もう秋だろって? いいや違うね。たとえ北半球のやつら全員が秋だと言っても俺にとっての夏は始まったばかりだ。異論は一切認めねぇ。

 そんなわけでPS4のホラーゲーム『P.T.』をやっているのだが、想像以上にひどいね。なんていうかもう“非道い”としか言いようのない怖さだ。個人的にはホラーフラッシュゲーム『The HOUSE』以来の衝撃である。「途中にバスルームと玄関のある廊下」という極端に狭い舞台に、よくもまぁここまで恐怖演出を詰め込んだものだと感心する。これをデザインした奴は絶対に心が歪んでいると思う。
 聞けばこのゲーム、メタルギアシリーズでお馴染みの小島秀夫と映画監督のギレルモ・デル・トロが組んで作った『サイレント・ヒル』新作の体験版的作品なのだとか。小島秀夫は少年時代に極端な怖がりだったことは過去に述べたが(→雑文139)、人間変われば変わるものだ。

 5ループ目までやってはみたが、真っ暗なバスルームの中に入る決心がつかず現在は停滞中である。いや、怖すぎて無理とかそういうわけじゃないんだよ。ただ一人称視点なのに画面右下に銃がないってのが落ち着かないだけで。これ以上進めたら恐怖で泣いちゃうとか、そういうわけじゃないんだよ。決して。

 というわけで『P.T.』は棚上げという形になったが、「恐怖の克服」を諦めたわけではない。今年の夏はもうひとつホラーゲームを用意してある。






 心霊ホラーFPS『F.E.A.R. Files』(2007)。
 ご存知心『F.E.A.R.』のスタンドアロン型拡張パック「Extraction Point」と「Perseus Mandate」を一本にまとめたもの。制作が初代及び2とは別なためF.E.A.R.正史からは抹殺された存在だが、プレイ感覚やユーザーインターフェースなどは初代とほぼ同じである。
(今このゲームを話題にしてるのって地球上で俺だけじゃないだろうか)

 もちろんローカライズなどされてないので英語オンリーの北米版。細かい話は分からないけど、アルマ母さんの晴れ姿さえ見れれば満足なので関係ないです。聞くところによれば「Extraction Point」の母さんは初代に比べて微妙にデレてるらしいのでちょっぴりワクワクですよ。恐怖の克服? ああうん、もちろん本題はそっちだよ。分かってますって。

 で、絶賛プレイ中かといえばそうではなくて、Filesを脇に置いて初代F.E.A.R.をやっていたりする。いえね、3とあまりにプレイ感覚が違うことに驚いて「F.E.A.R.ってこんなゲームだっけ?」→初代をプレイ→「話とか色々忘れてるし、最後までプレイしてみるか」となった次第。
 ま、心霊ホラー要素が一番強いのは初代だと言われているし、コレできっちりホラー分を補給した後、アルマたんファンディスクことF.E.A.R. Filesをプレイするのも乙なものではなかろうか。






 で、初代をやっているわけだが、やっぱり面白いね。体力が自動回復ではなくライフ制だったりダッシュがなかったりなど全体的にスローテンポだが、そのぶん慎重な立ち回りを要求され、戦闘に深みがある。マップ構成は迂回路が多いため常に敵の裏取りに気を配らないといけないし、地雷のような待ち伏せ兵器も活用できる。
 あと、地味に銃が3種類持てるのも火力高めで嬉しい点だ。代わりにスライディングキックがアホみたいに出しづらいのは欠点だが、実に味わい深いアクションゲームだと改めて思わされた。

 9年前のゲームとあってビジュアルの貧弱さは否めないが、陰影のくっきりした画づくりは3よりはるかにホラーっぽい雰囲気をかもし出している。




 また、やはり初代はホラーとの親和性が格段に高い。薄暗い屋内をライトで照らしながら進むのはドキドキするし、狭い通路ばかり続くのもホラー的な閉塞感を高めてくれる。
 入り組んだ通路が仇になって同じところをグルグル回ったりするのも一度や二度ではないが、これは仕方ない点かもしれない。

 戦闘部分もホラー部分もハイクオリティながら、その2つが溶け合っておらずちぐはぐな印象を与える…というのはリリース当時から言われてきた欠点だが、今にして思うと派手すぎないゲームデザインや通路が入り組んだマップなどは戦闘とホラーの乖離を最小限に抑えていたと思う。
 まぁ3と比べるとね。あっちは全体的にハイテンポだしパワードスーツは大暴れだし悪霊弟も大活躍だしでどこがホラーだって感じだからな。そこが好きなんだけど。

 あとあれだ。BGMや効果音は全般的に3より優れている気がするな。銃声はマシンピストルなら甲高く、ショットガンは重々しくとメリハリが利いているし、敵兵の断末魔も「グヷヷァ゙ァ゙ア゙アアアアア!!!」(←エフェクト)って感じに派手で、戦闘の迫力を格段にアップさせている。
 まぁ3と比べるとね。北米版に日本語音声を収録したのは褒めてあげたいが「サノバビーッチ!」など英語スラングまで日本語で読ませる面白吹替えは緊張感を削ぐことはなはだしい。まあ笑って許せる範囲だけど。

 ついでに言うとアルマの描写もかなり違いがある。出現シーンは基本的に棒立ちが多く、後のシリーズと比べると動きに乏しい。だが、これがむしろ不気味さ強調している。また本作のホラー演出の全てにいえるが、あからさまに怖いモノを真正面からプレイヤーに叩きつけて怖がらせる(驚かす)というものはほとんどない。遠くにぼんやりと人影が見えたり、視界の端にアルマが一瞬だけ映ったりなど、一拍遅れてゾッとさせられるものが多い。心臓ではなく背筋にくる怖さだ。

 まぁ3と比べるとね。3のアルマは何かに怯える様子を見せたり、膝小僧かかえてうつむいてたり、回想シーンではお人形を抱いて子守唄を歌ったり、あまつさえマルチプレイでは楽しげにスキップを披露したりとホラーヒロインっぽさが相当薄れてるからな。そこが可愛くてたまらないんだけど。

 そんなわけで初代F.E.A.R.を一通り最後までプレイした。ロケーションの変化に乏しい(ステージの大半が屋内)とか、やや冗長という欠点はあるにせよ、銃撃戦と心霊ホラーを高いレベルでまとめた傑作であると再確認できた。
 このシリーズ、拡張パックを別にすれば純粋に心霊ホラーを追求したのは初代だけだとよく言われる。ファンから「初代だけが真のF.E.A.R.」と評される所以だ。もしF.E.A.R.4が作られることがあれば、もう少しこの辺を追求していただきたい。
 まぁ望み薄だと思うけどね。そもそも「ミリタリーFPS+心霊ホラー」という悪魔合体じみた発想そのものが稀有であり、まがりなりにもちゃんとしたゲームになったのが奇跡のようなものだ。

 ここ数年のFPSはマンネリ感がぬぐいきれないが、一方でホラーゲームはインディーズ含め意欲的な作品がいくつも出ている。冒頭で挙げたPS4の『P.T.』は全世界のゲーマーを失禁寸前に追い込んだし、傑作心霊ホラーシリーズとして知られるWiiUの『零〜濡鴉ノ巫女〜』も評価が高い。
 地味ーにホラーの流れが来ていると思うので、ここらで初代F.E.A.R.の精神を継ぐようなFPSが出てもいいと思うんだがな。背中に嫌な気配をビリビリ感じるような恐怖と、アドレナリンが神経にビリビリくるような銃撃戦。このふたつをミックスさせたゲームが。

 ちなみに現在韓国のメーカーによって作られている最新作『F.E.A.R. Online』はこんな感じ。




 F2PスタイルのCoopシューターらしいが、Coopモードもあるらしい。
 ドンパチ+ホラーという基本部分は踏襲しているが、トレーラーを見る限りでは騒々しい「ドッキリ系の怖さ」だろう。アルマがやたら頻繁に出てくるが、これもいかがなものか。初代やExtraction Pointでは「何もない状態」が恐怖をかきたて、ちょっとした光の揺らぎや自分が空き缶を蹴とばした音にビクッとなったものだが、そういう一種の奥ゆかしさは感じられない。

 ちなみにCoopだとこんな感じである↓




00:40くらいに母さんのおみ足



 トレーラーを見る限り心霊のシの字もなさそうなモンスター退治シューターであり、1作目の面影はもうどこにもない。そもそもCoop前提のゲームデザインで、自分の足音に怯えるようなホラーが成り立つはずもない。
 こんな騒がしいゲームでちゃんと母さんのキュートさを堪能できるか怪しいものだ。というか同じ韓国産シューターの『HOUDS』と方向性同じじゃねーのかなコレ。F.E.A.R.3の目指した先がコレだと言われると反論しにくいが、それでももっと別のやり方があったように思う。

 唯一コレは3より優れていると思ったのは女性キャラの造形かな。





 Onlineはキャラクターメイキングで女性兵士も選べるようなので、そのバリエーションではないかと思う。右から2番目のおっぱいタトゥーさんは結構いいね。アーマカムの警備関係者か何かだろうな。
 おっぱいごときでOnlineへの期待感が上がるはずもないが、3のジン・スワンの残念っぷりを思えば少しばかりの慰めにはなる。韓国製シューターはこのへんぬかりないよな…。



追記:
 初代を持ち上げまくったが『F.E.A.R.3』が大好きなのは今でも変わらない。
 戦闘はスピーディーでスライディングキックも出しやすくなり、カバーアクションも使い勝手がいい。スライディングで障害物に陰に滑り込み、そこからカバーしつつ射撃という使い方もできる。超人兵士のロールプレイとしては明らかに初代より優秀だ。またフェッテルの悪霊プレイは、これのスピンアウトで1本作ってほしいくらい独自の魅力がある。アクションゲームとしてレベルが高いのは疑いない。何よりアルマが可愛い。何よりアルマが可愛い。血の絆なので2回言いました。

 問題はこれら新規要素のことごとくがホラー部分を減退させている点だ。
 スピーディーでパワフルな銃撃戦も、型破りな悪霊プレイも、がが可愛可愛いいいいいのののの(←エフェクト)も、全力でホラーから遠ざかっている。初代には確かにあった、戦闘とホラーをすり合わせる努力をハナから放棄しているように感じられる。
 一人称視点はホラーと相性がいいはずだが、「今時のFPS」を無理やりホラーとくっつけても違和感だけが先に立ってしまう。それをF.E.A.R.3以上に強調してみせたのが『F.E.A.R. Online』だろう。

 この乖離を解決する一番の近道は「ドンパチ撃ちまくりシューター」ではなく「戦闘回避とステルス重視のサバイバルホラー」を目指すことだ。
 実際、初代F.E.A.R.を作ったMonolithが次に手がけた『Condemned』(コンデムド:サイコクライム)はその路線である。基本的には敵を倒して進んでいくゲームだが、戦闘は泥臭い鈍器アタックが中心であり、バリバリを敵を倒しまくるようなアクションはばっさり切り捨てている。その結果、ブレのない正統派サイコホラーとして最高級の賛辞を得た。

 だが――管理人が求めているのはそういう路線ではないのだ。
 アサルトライフルに弾倉を叩き込んで初弾を薬室に送り込み、「俺のベイビーに挨拶しやがれ!」と絶叫しながら撃ちまくるようなガンファイトと、廊下の奥の闇にいもしない悪霊の姿を見ておののくようなホラーを、無理やりくっつけたようなホラーFPSがやりたいのだ。つまるところ「初代F.E.A.R.」の路線のゲームがまた出て欲しい。
 ぶっちゃけた話、これは真剣に恐怖と向き合う勇気がないため、大好きな銃撃戦で適当にお茶を濁したいという逃避には違いない。だが一方で、ミリタリーシューター&心霊ホラーという無茶な融合を愛おしく感じるのもまた事実だ。そこにはCODコピーが氾濫する以前の、FPSに豊かな可能性が残されていた時代の懐かしさがある。
 初代F.E.A.R.はホラーとFPSの融合という点ではちぐはぐであり洗練されてはいなかったが、この作品にしかない面白さが確かにあった。いつか管理人のようなドンパチ大好きの怖がりが、F.E.A.R.の精神的後継作を作ってくれればいいなぁと考えている。






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