10.03/05 その108 性転換(女体化)について思う存分語ろう





エスプUの何がすごいかっていうとだな!
弾を遅くするスキルのことを、「覚聖」というのですが、
「覚聖」してる間、キャラの性別は反転します。
何度でも言う。キャラの性別は、反転します。
兄キャラは姉になるので、「兄姉」であり、
妹キャラは弟になるので、「いもおと」であるわけですよ。


――佐々木ケイジ「にゃんにゃん堂80000V」より



 Xbox360にて先日発売された「エスプガルーダ2」(アーケード版公式)の、佐々木さんのレビューより抜粋。
 「いもおと」なる言葉っていうか概念は初めて知った…。弟が妹になるのはまだいいとして、妹が弟になるって一体何のメリットが…いや、なんでもないです(エスプガルーダ2には実際そういうキャラがいる)。

 というわけで今回は「性別反転」について。悪いけどエスプガルーダ2の話じゃないよ! バレットタイムSTGとして興味が湧いてはいるんだけど、2DSTGは怒首領蜂大往生のパッチがくるまでお預けって決めてるから!


 本題に入ろう。
 いきなり結論から言うと、性転換…ここでは男性→女性に限定するが、このネタはいろいろと遊びがいがあるよねということだ。
 例えば日本のお家芸となりつつある「萌え化」だが、これも一種の性転換、女体化と捉えられる。三国志などを見ればうんざりするほどよく分かると思うが、一見萌えとは無関係そーなキャラを華奢な美少女に変えてしまうというのは悪ノリ的な楽しみがある。また元ネタが分かる程度に本来の要素を残してデザインし直すのも描き手としては挑戦しがいがあるし、見る側としても面白い(もちろんそういうノリを楽しめる人限定だが)。
 ゲームで言えば「ヴァンパイアセイバー」のデミトリの超必殺技「ミッドナイトブリス」などがまさにそれで、カプコンvsSNKでさらに大きく開花した感がある。

 管理人自身もオリジナルキャラでこの手のアレンジをちょくちょくやっている。サイトで未発表のものも含めると次のようなものがある。



参考→



参考→





参考→









参考→









 最後のは女体化とかじゃなくて単なる中身だろと言われそうだが、まぁ似たようなものだ。
 悪ノリで女の子バージョンにしたのもあるが、実を言うと大半はオリジナルの女性キャラを描く際、デザインを悪党・怪人から流用しただけだったりする。
 管理人は一から女の子を描こうとすると、可愛く見えるテンプレから外れないようにと無難なデザインになりがちなのだが(飽くまでも管理人の場合ね)、悪党の場合は細かいこと抜きに趣味全開で飛ばした出来になるので、それをベースに女性化するとわりと管理人らしさが出たデザインになってくれる。
 5年前のエイプリルフールは上みたいな感じでギャラリーの悪党・怪人の絵を全て女性キャラに差し替えて美少女CGサイトを装おうという無茶をやったのだが、いずれまた似たようなことができないかと考えている。


 デザイン的な話はこれくらいにしてシチュエーション的な性別反転の話に移りたいが、「女体化とか普通にキモいんですけど」という人はここらで帰ってもらった方がいいかもしれない。


 …OK、今ここ見てる人は女体化もイケる人ってことでいい? じゃあ始めるよ。

 雑文その99では「男装の麗人の魅力は存在の危うさ」ということを書いたが、性転換(もう女体化でいいや)にも同じことが言える。
 男装の麗人は男装という外殻と本来の性という中身のズレが危うさを生んでいるわけだが、女体化はさらに踏み込んで肉体的な性と精神的な性のズレに危うさがある。つまり体は女だけど中身は(まだ)男であり何だよブラとか着け方わかんねーよってかアレアレ男友達がなんだかギラついた眼でこっち見てますよって感じの魅力がある。長いよ。

 つまり友人→彼女という流れの倒錯ラブコメですな。
 例えばヒロイン(元男)は今も男だった自分を捨てきれないけど、友人からすれば元はどうあれは今は厳然たる「女の子」であるわけで、当然接し方も変わり、互いの感情にズレが生まれてくる。ヒロイン(元男)は今まで通りに接してほしくても周りはそうは見てくれず、さらに体の変化(生理とか)などで自分がもう男ではないということを否応なく認識させられ、精神的に追い込まれていく。
 さぁ、そこで友人はどうする! 子どものころからヒロイン(元男)と一緒に遊んで、強い所も弱い所も全部知ってる友人は、どう対処すべきか!
 「俺がついてる。俺が一生お前を守ってやる」と強く抱き締めるか!
 「男がメソメソしてんじゃねぇ! 歯ァ食いしばれ!」とダイナマイト友情パンチを叩き込んで歯の一本もヘシ折るか!!

 ちなみに上のようなクライマックスに至るまでに、ヒロインが無意識のうちに見せる色気に友人や周囲の男どもがドキっとするような展開が随所に挿入されます。
 着替えようと捲りあげたTシャツから下乳がのぞいたりというストレートなものから、華奢になったうなじや鎖骨のラインの色気とか、無理やり女物の服やら下着やらを着用させられて羞恥に頬を染めるところまで含めて色々と。

 話が進むに従ってヒロインの反応も「なんだ? 俺の胸なんか見たいのか?」から「何見てんだよ、ヘンタイ!」という具合に変化していくわけですよ。やがて友人に別の女が言い寄るのを見て心穏やかでなくなるというあたりが萌えシチュエーションの最高潮です。

 でも、ここに至るまでに何かもう一押し欲しい気もする。ヒロインが「気持ちはまだ男」という一線を越えて友人に独占欲を抱くようなイベントが。
 風邪ひいて意識が朦朧としてる状況とか、あるいは酒とかクスリとかの勢いで、こう、友人同士のスキンシップじゃ済まされないレベルの身体接触が。

 そんなこんなでイベントをこなして、上に挙げたような怒涛のクライマックスへと……いや、ちょっと待てよ。お互いの気持ちを知らないまま葛藤したり悩んだりという日常をゆるめの萌えコメディ方式で続ける手もあるな。

 女扱いされることを拒否しているヒロイン(元男)と、その気持ちを汲んで今まで通り男友達として接する友人。しかし時の流れはやがて2人の気持ちを変化させる! ヒロインはいつしか“異性”として友人を見るようになり、これまで抱くことのなかった感情が身の内に生まれていることを知る!

 甘えたい。
 自分だけを見て欲しい。
 抱きしめて欲しい。

 しかし自分から女扱いするなと言った手前、今さらそんなこと言えないし、もしかしたらドン引きされるかもしれない。全てを失うかもしれないという恐怖もあいまって、想いを抑え葛藤する恋する女の子。
 で、その友人はというと実はとっくの昔にヒロインを異性としか見られなくなっており、ヒロインが葛藤の狭間からほんの少しだけのぞかせる女の子らしい仕草にモロに心を撃ち抜かれて毎日煩悶。

 髪を撫でたい。
 抱きしめたい
 脱がしておっぱい揉んtjょq@pじs


 それでも表面上は今まで通りの男友達を演じ続けねばならないという業苦。せめて自然に距離を取れればと思うんだけどアイツいつもくっついてくるしってゆーか以前より明らかに身体接触のレベル上がってませんかー! もしもーし!!

 って感じで。



 …えーとですね。今、管理人は前だけ見て突っ走ってるんだけど、皆ついてこれてる? 振り返ったら誰もいないなんてことはないよね?

 まぁね、確かに性転換モノは禁忌度の高さが魅力だが、それだけに疑似ボーイズラブに陥りかねない危うさがある。もちろん肉体的にはごくまっとうに男×女なんだから、801だのゲイだの女装美少年だのとくらべれば明らかに健全、生物としてまっとうなジャンルなのだが、「中身が男なのに男に惚れるとかあり得ねぇ」と拒否反応を示す人も少なくないと思う。
 もちろんその意見も納得できるが、一方で人の意識というものは結構環境にひきずられるものではないかと思うのだ。

 例えば一人の男性を女装させたとしよう。当然本人は嫌がるだろうが、周りの男性全てがこぞって(←ここ重要ね)「可愛い」「綺麗だ」「正直結婚したい」と言い続けたとしたらどうだろう。そのうち満更でもない気分になり、やがてはその人も女性として振る舞うようになるのではないだろうか。

 もちろんそこから恋だの愛だの性欲だのといった領域にジャンプするかどうかは別の話だが、環境が人を作るというケースは少なからずあると考える。
 言っておくがこれは管理人の適当な思いつきじゃないぞ。アメリカでこれとよく似たケースの実験が行われ、環境によって課せられた役割が人を変えるという例が報告されている。


スタンフォード監獄実験(Wikipedia)

 フフ…「監獄実験」か。この禍々しい響きはちょっとときめくね。
 何が言いたいかというと、ジェンダー(社会的な性)というのも絶対ではなく、環境次第で変わる可能性も少なくないのではないかと。性別の絶対的基準である肉体構造が変化したとすれば、自分の意識だけでジェンダーを保持できるものだろうか。スタンフォード監獄実験の結果はその問いにわずかながらヒントを与えているのではないかと管理人は考える。
 我々を取り巻くこの社会も巨大な実験場だと言えなくもない。我々は神という観察者によって番号札を付けられたモルモットに過ぎず、広大に見えて実は矮小なケージの中で飼育され、やがては処理される哀れな……って何の話してたんだっけ。



追記:
 性転換(女体化)を扱った作品というのはニッチに見えて実はかなり多い。ロリコンやショタコンと並んでニョタコン漫画とジャンル分けしてもいいくらいだ。
 管理人も雑文36で紹介した「ワンダル・ワンダリング!」を始めいくつか気に入っている作品、現在進行形で注目している作品があるが、その中から新旧ひとつづつ紹介しておこう。


世界の果てで愛ましょう(武田すん/電撃マ王連載中)


 平凡な男子高校生・涼馬は異世界からやってきた王子に見初められ、不思議なテクノロジーで女に変えられてしまう。
 涼馬を妻にしようと強引に迫る王子、実は兄に懸想していた涼馬の弟、その他クラスメイトも巻き込んで展開するドタバタコメディ。
 性転換モノとしては主人公・涼馬の葛藤があまり描かれてないのが惜しい。王子にはたびたび肘鉄を食わせているものの、性別を変えられたことにはそこまで深刻に考えていない節がある。
 ただ、涼馬の弟は非常に良い。もともと兄に対し生物として不適切な想いを抱いていたが、その兄が女になったところでリミッターが外れ気味になり(真性のホモではないようだ)、煩悶の度を深めつつ「兄貴は俺が守る!」と王子といがみ合う役どころである。
 女体化した主人公の周辺を彩るサブキャラとしてまことに正しい。この他にも涼馬のクラスメイトである男子連中なども期待を裏切らない反応を見せてくれるあたり、作者は実にワカっていると思う。
 軽いタッチでさくっと読めるのが魅力ではあるが、舞台が半分ファンタジーなんだからもっと悪党と怪物が出てきてもいいのにというのは管理人の我がままだろうか。だろうな。



問題ないね!? ヒデユキくん(滝沢ひろゆき/単行本・松文館→ぶんか社)


 部活に、恋に情熱を燃やす青春まっただ中の高校生・頸城ヒデユキは、ある日体調不良で昏倒し、目覚めると女の子になっていた。
 医者が言うには、彼は「女性仮性半陰陽」、つまり男だと思って生活してきたが、本来は女であったというのだ。部活の仲間や友人、そして彼女との関係を壊したくないヒデユキは、女になったことを隠しながら今まで通りの生活を送ろうとするが…という性転換のシリアスな面に焦点をおいた漫画。
 コメディ的な描写も多いが、主題は主人公・ヒデユキが女になったことで何を失うか、またそれにどう向き合っていくかという部分であり、性転換モノとしては本格的な部類に入る。

 人間社会の中で生きる以上、性別が変わるということはそれまで得たもの、培ってきたものを失うことでもある。これは極端な言い方ではあるが、顔を合わせる関係や体を使った行為のほとんどは従来通りにはいかなくなるだろう。
 それは、ヒデユキに女性になったことを告げた医師の「君のこれまでの16年はなんだったんだろうね」という台詞に如実に表れている。
 わりと軽めのラブコメやギャグとして描かれた性転換モノは山ほどあるが、女性仮性半陰陽というリアリティを持ち込んで(漫画的にアレンジされてはいるものの)「存在の危うさとそこから生まれる関係の変化」というテーマの重い面を描いた物は多くない。その意味でも性転換モノとして押さえておきたい一冊だと思う。


 とりあえず性転換モノの漫画はより広範に紹介されているサイトさんがあるので、興味のでてきた人はそちらでいろいろ調べるとよいと思う。

追記:
 この更新にあたって女体化ネタを探していたのだが、2chのVIP板に「自分のスペックを晒して絵師に女体化してもらおう」という主旨のスレが立っていたらしい。
 「女体自分萌え」ってやつか。こりゃーなかなかレベル高ぇ遊びだぞ…。ある意味で女装趣味に近いかもしれんよこれは。
 え? オマエも上でやってたろって? いやぁ、あれは自画像からして悪党キャラの流用だしな…。



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