11.08/31 その155 対独爆撃部隊ナイトウィッチ――乙女たちの挽歌





 最近は毎晩「Toy Soldiers:Cold War」でソ連軍を吹き飛ばしてばかりいる管理人です。Здравствуйте!
 いやぁほんと面白いわこれ。前作が出た時は「でも…SLGなんでしょ?」と尻込みしていたのだが、これは間違いなくトリガー野郎向けのクソ熱いアクションシューティングです。破壊と暴力をありったけ詰め込んだ大人のためのおもちゃ箱といっても過言ではないね!
 ただひとつ不満なのは、キャンペーンがアメリカ軍オンリーなこと。ソ連軍も使わせろよ! RPK軽機関銃とかRPG-7とかハインドとか使って、世界を資本主義の魔手から救いたかったですよ。可能ならDLCで出してほしいくらいだ。

 今年はソ連崩壊からちょうど20年という節目でもあるし、いま管理人の中にはソビエト連邦への赤くて熱い思いが燃えている。そんなわけで今日はソ連の映画レビューなどしてみようと思う。
 あ、別に暗くて陰鬱とかそういうのではないですよ? 青春まっただ中の女の子がわんさか出てくる、実に華やかな映画です。



対独爆撃部隊ナイトウィッチ(1981)



 以前当サイトでも紹介した「出撃! 魔女飛行隊」と同じ題材の映画だ。
 第二次大戦時におけるソ連軍で、女性のみで構成された飛行連隊――そのうちのひとつ、第588夜間爆撃機連隊(通称:夜の魔女)の乙女たちの戦いや交流を描いており、フィルムの質の悪さが目につくものの「知られざる女の子戦闘部隊の内幕」という前提で観るとなかなかに楽しめる。
 およそ75分ほどと短い映画ながら(一部カットされてる気もするが)、内容は盛りだくさんですよ?


戦闘あり!


友情あり!


ロマンスあり!


水着あり!


幼女もいるけど、これは別にどうでもいい。



 ソ連軍の兵士といったら蛮族ヅラのヒゲ男がウォッカを飲んでウラー! というイメージが先に来るが、世界のどこであれ女の子は可愛いものですよ、やっぱり。
 この映画、予算が足りなかったのか戦闘シーンは少ない上にショボく「実物のソ連兵器がいっぱい見れるかも!?」という期待にはこたえられないのだが、恋もすればおしゃれもしたい年頃のお嬢さんたちの戦場ライフを追う映画としてはよくできている。
 そして、その物語に深みを与えているのが戦災孤児のフェージャ。



 ドイツ軍に襲われていたところを運良く中隊長のオクサーナに拾われた彼は、女だらけの部隊の黒一点として周りに溶け込んでいく。ことに中隊長のオクサーナは我が子のように彼を慈しむが、戦闘部隊にいつまでも子供を置いておくわけにもいかず、上層部から孤児院へ送るよう命令されてしまう。苦悩するオクサーナは、命令書をこっそり隠してフェージャが連隊にいられるよう画策する。


オクサーナとフェージャ


 中隊長という責任ある立場にいる彼女が、規律を破ってでもフェージャを放したがらないのは理由があるのだが、結局はそれがもとで機上でコンビを組む親友との間に軋轢を生んでしまう……というのが後半の山場といえる。

 戦争ものだから当然ではあるが、展開は実にシリアスだ。この時期ソ連軍は順調に進撃しており、第588爆撃機連隊もドイツにまで進出するが、それとは別に隊員たちは容赦なく死んでいく。
 戦闘シーンそのものは少ないとはいえ、夜間戦闘の恐怖に我を失う隊員や、被弾し炎上する飛行機の中で「お母さん!」と泣き叫ぶ隊員の姿など、過酷な戦争の一端が描かれている。
 とはいえ、そんな境遇にあっても女の子らしい茶目っ気や陽気さを失わない乙女たちの姿こそこの映画の魅力である。具体的には海での水着シーンとかね。





中隊長はピンク。



 きゃあきゃあと嬌声をあげながら戯れる乙女たち。アニメでいうところの水着回ってやつですよ。「父親たちの星条旗」でも似たようなシーンがあったが、海兵隊の兄ちゃんらと比べて華やかさが段違いですな。もう戦争なんてしなくていいからずっと海で戯れていてほしいね、と温かい気持ちになる一幕だ。
 あと、パーティーを控えて浮かれるシーンとか。




カーテンの生地で即席のドレスづくり



 苛酷な任務に就きながら、それでも失われない女らしさにロシア女性の逞しさが垣間見れるような気がする。
 メインの隊員たちはみんな若い女の子だが、彼女らの上に立つ連隊長と政治委員のおばさんもいいよ!




連隊長(左)と政治委員



 物語冒頭、隊員の一人・ガーリャが仲間の手引きで病院を抜け出して連隊に戻ってくるのだが、そのシーンの怒声が良くってね…。


ガーリャ「ガーリャ・ポリカルポワ、ただいま病院より戻りました。ご命令を」


 仲間と共に得意満面なガーリャだが、連隊長は病院から「勝手に患者を連れ出すとは何ごとだ!」と身に覚えのないクレームをつけられ頭に来ていたからさあ大変。


連隊長「全員、十日間の拘留! ポリカルポワは病院に」

ガーリャ「お言葉ですが、病院には戻りません。体ならもう心配いりません」

連隊長「…本当に一体なんなのお前たちは!」(バン!)


 ここ。ここね。怒られたい願望がある人は日本語吹替えにして聞いて欲しい(オリジナル音声は収録状態がいまいち良くないのもある)。
 大喝されて黙り込むガーリャ以下隊員たちだが、そこに司令部から連絡が入り、すぐにでも操縦士が必要となった。


オクサーナ「連隊長! 操縦士が足りません。ポリカルポワに飛行の許可を」

連隊長「抜糸がまだでしょう!?」

ガーリャ「平気です!」

連隊長「ふう……拘留は保留! 終戦までね」

ガーリャ「やったあ♥」


 仲間と手を取り合ってはしゃぐガーリャ。すかさず連隊長から一喝が飛ぶのだが、彼女らに背を向けた連隊長の顔には一瞬だけ微かな笑みが浮かぶのだった。個人的にすごい好きですこのシーン。いや怒られたい願望とかじゃないよ? 上官と部下の絆? みたいな?(怒られたいんだね)
 また政治委員のおばさんもいい味を出している。ソ連軍の政治委員といえば逃げ腰になった兵士を容赦なく射殺するようなイメージが強いんだけど、彼女は隊員たちのお母さん的な位置付けだ。……さすがにこれは党に配慮したんだろうか?


 「出撃! 魔女飛行隊」と比較してボリュームは劣るものの、女子飛行連隊をビジュアルで見れ、しかも本元であるソビエト連邦で作られた映画という点からとても貴重な作品ではないかと管理人は思う。
 もしかなうなら「9POTA(邦題:アフガン)」なみのクオリティでリメイクしてほしいものだ。ついでに「スターリングラードの白薔薇」ことリディア・リトヴァクが活躍した第586戦闘機連隊のエピソードも折り込み、3時間くらいの大作にしてほしい。うん。絶対受けると思うよ。主に管理人に。



追記1:
 上の方でどうでもいいと書いたすきっ歯の幼女だが、この子もフェージャとの絡みでいい味を出していたりする。年の近いフェージャのことを慕っているのだが、フェージャは小娘のお守りなど御免だとばかりにつっけんどんなあしらい方をする。

「フェージャー」

「ちゃんと正式名で呼べよ」

(敬礼して)「りょうかいです、しれいかんどの!」

「よし、行っていいぞ」

「…やだ」

「行っていいって言ってるだろ」

「やだもん…」


 うん、フェージャと遊びたいんだよね…。でもフェージャの気持ちも分かる。早く一人前の兵士なりたいと躍起になっているところだし、そもそもあの年頃の男の子はこんなもんだろう。妹がいた人はよく分かるのではないだろうか。
 しかし19981年製作の映画だから、あのリトルハニーも今は30半ばくらいか。……あれ? 充分いけるね。ロシア女は劣化がすごいだと? そんな台詞は連隊長のナイスマダムっぷりを見てから言いたまえ。叱られたくなること請け合いだぞ。


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雑文その98・「出撃! 魔女飛行隊」――空を舞う魔女たちの翼
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