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17.05/04 その257
Call of Duty:WW2――ウインズ・オブ・ビッグボーイ






 『Call of Duty:WW2』が発表されましたね。
 ちょっと前から「今度のCODは原点回帰」と言われてはいたが、まさかホントに第二次大戦になるとは思っていなかっただけに「ずいぶん思い切ったなぁ」と素直に驚かされた。日本未発売の『World at War』を除くと第二次大戦モノのCODは2007年の『COD3』以来になるだろうし、実に十年ぶりの原点回帰といえる。

 古参兵の皆さん、これはチャンスですよ。COD4(MW1)からシリーズに入門した若い衆に先輩風を吹かすチャンスです。ライフル(M1ガーランド)にフルオートがないことに戸惑っている新兵の横で「あ〜このクリップ排出音なつかし〜」とか「ちゃんと銃があるぶんソ連兵よりはマシだよね。あ、ゴメンひょっとしてソ連知らない?」とか、何コイツうぜえ死ねよって思われるくらいに先輩オーラ出していきましょう。COD2以前のWW2ゲーの話題を出して「俺十年以上前からFPSやってるし?」アピールするのも効果的ですね。
 ちなみに管理人のFPS歴の原体験はCODの母体でもある『Medal of Honor:Allied Assault』(2002)です。オマハ・ビーチに上陸するステージの迫力には当時驚かされたものですよ。まぁ今の目で見るとすげぇチャチではあるけどな。あの感動はリアルタイムで経験した人にしか分からないかもね〜?




MOH:AAのオマハ・ビーチ



 何これPS2? って思う人もいるかもしれないが、バカ言っちゃいけません。同じ年にPS2で出た『メダル・オブ・オナー:史上最大の作戦』のオマハ・ビーチはコレより迫力ある。





 上陸用舟艇の中で嘔吐する兵士がいたり、海中に投げ出されてから海岸に上陸したりと、ネタ元である映画『プライベート・ライアン』の再現度はこっちが上ですね。
 思えばあの頃は管理人も若かったな〜。具体的にはドイツ国防軍と武装親衛隊の区別もついてないピュアボーイでしたね。ま、そんな管理人も今では立派な軍オタ…の見習い…の候補生…の予備役くらいにはなったといえるかもしれませんけどね。


 ちょっと真面目な話をすると、十年前と比べて今はミリタリー関連の裾野が著しく広がっている。『艦これ』や『ガールズ&パンツァー』といった“美少女ミリタリー”ものの作品が若い層を中心に大ヒットしているし、そこから入って軍事趣味に手を出す人も増えただろう。十年前のミリタリー供給源といえば学研の歴史群像シリーズや小林源文、滝沢聖峰といった硝煙臭い解説本や劇画類が主だっただけに、時代も変わったなと思うことしきりである。
 一応当時も美少女+ミリタリーというジャンルはあるにはあった。現在その方面の専門誌となっている「MC☆あくしず」はその前身である「ミリタリー・クラシックス」時代から兵器の美少女化企画をやっていたし、『萌えよ戦車学校』や『どくそせん』といった解説本も話題を集めていた。ただこれらはどちらかといえばニッチ向けであり、今日のような一大ジャンルになるとは当時誰も思っていなかった。
 たとえば十年前の秋葉原にタイムスリップし、道行くオタを捕まえて「未来では帝国海軍の軍艦を美少女化したゲームが大人気になっている」とか「女子中学生が戦車を乗り回すアニメが大ヒットするぞ」とか言っても狂人扱いされるだけだろう(そりゃそうでしょうね)


 つまるところ、今時の若いオタは昔と比べて(WW2の)ミリタリー知識はそれなりにあるだろうと思われる。なので、MOHやってました程度の知識で「俺WW2詳しいし?」なんてやっても恥をかくだけだろう。
 いや、でもFPSの基本たる歩兵戦闘に関してはあまり開拓されていない可能性はあるぞ。海戦は『艦これ』、戦車戦は『ガールズ〜』があるし、空戦も『ストライクウィッチーズ』で部分的に啓発されているが、歩兵用小火器や歩兵戦闘に注力した美少女モノでは大ヒットといえるものがまだ出ていない。銃+美少女というジャンルは根強い人気があるが、銃を擬人化した『うぽって!』はあまりパッとしなかったようだし、ヒット作と呼べるのは『ガンスリンガー・ガール』(2002)までさかのぼるのではないだろうか。
 現在日本語ローカライズ中らしい中国製のスマホゲー『少女前線』がこっちでもヒットすれば流れも変わるかもしれないが…。




銃を擬人化したSLGらしい




 話が変な方向に飛んだが、COD:WW2(のシングルキャンペーン)はとても楽しみにしている。現時点で明らかになっている仕様だけでも、これはすごく面白くなるのでは? という期待が膨らむ。


・体力は自動回復されず、回復は衛生兵に頼む必要がある
・弾薬を補給するスポットは存在せず、弾薬が切れた場合はスクワッド(分隊)に頼んでマガジンを受け取る必要がある
・スクワッドには衛生兵や補給兵のほかにも特殊なアビリティを持つ兵士が存在
・これらのスクワッド兵士を失う可能性もある

――CoD:WWII:キャンペーンに体力の自動回復なし(EAA!!)



 開発チームの人いわく、今回の主人公は「スーパーヒーローではなく、普通の青年」とのこと。
 思えばこれは初代CODのコンセプトそのままである。MOH:Allied Assaultを開発していたメンバーの中から「エリート兵士ではなく無名の一兵士」を描こうとした人々が独立して立ち上げたのがInfinityWardであり、彼らがCall of Dutyを生み出した。後にそのInfinityWardが作ったCOD4がシリーズを「ヒーロー路線」に転向させたのは皮肉というほかないが、めぐりめぐって原点回帰を果たしたということになる。

 ただ原点とかを抜きにしても、上記の仕様はアクションゲームとして面白くなりうるのではないか、と思う。回復・補給手段が分隊員頼みなら、一人で突っ込んでドンパチするのではなく、分隊全体に気を配った戦い方が求められるだろう。さじ加減を間違えるとストレス要素になるだろうが、うまく噛み合えば戦術的な深みのあるシューターになる…かもしれない。

 管理人はCOD2をやった時、周囲に共に戦う兵士がいることに感動を覚えた。敵も味方も大人数でぶつかり合う壮絶な銃撃戦――これぞ俺が求めていた戦争ゲームだ! と感じたものだが、今の目で見ればそれらは賑やかしという要素が強かった。味方の兵士たちに何かしら指示や要求ができるわけでもなく、それぞれ勝手に戦い、いつの間にか死んでいるような存在だ。
 要するに彼らは「共闘感」を出す演出の一環でしかなかったわけだが、分隊員が密接にゲームプレイに関わってくるなら、単なる演出を超えた真の共闘感が味わえる気がする。ゲーム的な面白さだけでなく、戦争ゲームにおける演出としても旧作を超えた出来になる…かもしれない。

 ちなみにこの回復・補給システムは一部報道で「『Bioshock:Infinite』のシステムに近い」と言われていた。おそらくエリザベス嬢が戦闘中にアイテムをぽいぽいしてくれることを指しているのだろう。あと戦闘不能になった時にお注射で復活させてくれたりもしたな。敵から攻撃を受けることもないし、実に便利なキャラだった。

 しかし、その「敵から攻撃を受けない」というのが最大の不満点だったのも確かだ。以前レビューで書いた不満の繰り返しになるが――なぜ、彼女を守るという要素をゲームとして取り入れなかったのか? なぜ、プレイヤーに奉仕するだけの便利キャラにしてしまったのか?
 Bioshock:Infiniteはブッカー・デュイット(プレイヤー)とエリザベスの深いつながりの上に成り立つゲームであり、そのシナリオは高く評価されている。だが、少なくとも戦闘における2人の関係は悪い意味でゲーム的なご都合主義に甘んじており、彼女を人格のあるキャラクターとして描くことを放棄しているように思える。
 男なら誰でも…いや女性であっても、殺し合いの渦中にか弱い少女がいるなら身を挺して守ろうとするのが普通だ。またそれとは別に、少女を守ることでアイテムの補給等が受けられるなら、ゲーム的なリスク&リターンとも噛み合って戦闘の面白さを増すこともできただろう。

 今更Bioshock:Infiniteに愚痴を言ってもはじまらないが、COD:WW2にはそうしたギブ&テイクをゲームとして取り入れて欲しいと思う。一方的に与えられるだけではなく、時にはこちらが体を張って救う。友のために血を流す覚悟があってこそ、真の戦友(ブラザー・イン・アームズ)たりえるのではないだろうか。



 それからしばらくして、彼はささやくような声を聞いた。「ド・マー、だいぶやられたかい。このへんに煙(煙幕)を要求しておまえたちを収容してやるからな。匍匐できるか」。ド・マーは、命がけで彼を救いにきて声をかけてくれているのが誰だかわからなかったが、戦友が彼を救おうとしていると知って、信じ難いほど力づけられた。彼は頭をなかば地面にめりこませたままで、「匍匐前進できるかだって」とささやき返した。「国までだって這っていけるさ。いつ煙幕が張られるか教えてくれ。そのときまで動かないでいるよ」

――――ジョージ・ファイファー『天王山―沖縄戦と原子爆弾』(上)



 最新作のCOD:Infinite Warfareはスペースオペラ的な世界観が賛否両論を呼んだが、中身は手堅く作られた「いつものCOD」だった。テンポのいいシューティング・ゲームとして決してつまらない作品ではなかったが、その「変わらなさ」はCODシリーズの限界も露呈していた。
 COD:WW2の打ち出した自動回復の廃止と分隊の相互協力という要素は、従来のCODのゲームデザインを根底から覆す試みだ。それはシリーズの大きな魅力だったカジュアル性とテンポの良さを幾分か差し引くことになるかもしれない。それを補って新たな面白さを確立できるかどうか、開発を担当するSledgehammer Gamesの手腕が問われるだろう。

 とりあえずBF1でのんびり戦場ぐらしを続けつつ、11月の発売日を待とうと思います。



追記:
 現在管理人はBF1からの流れでWW1にハマっており、複葉機や菱型戦車も「この古風さがカッコいいよな」と感じるまでになった。これまで興味のなかったWW1の銃器・兵器・戦術・世界情勢に目が向くようになったのは大きな収穫だが、もうひとつ管理人の意識に意外な変化が起きた。
 WW2の兵器類がものすごく先進的に見えるようになったのだ。手探り感あふれるWW1のそれに比べ、実に洗練された美しさがある。単発単葉の戦闘機ってすげえスマートだよね、とか旋回砲塔の戦車とかもう現代兵器じゃね? とか爆撃機の遠隔操作式銃座とかもうSFの世界じゃね? という感じ。
 COD:WW2も、きっと懐かしいという以上に新鮮な気持ちで遊べるのではないかと思う。できれば歩兵戦だけでなく、(COD2のように)戦車戦などビークルに乗れるステージも入れてほしいね。





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