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16.01/29 その236
FarCry4―― Primalの前に予習しようぜ!





 今年は3月の『The Division』を皮切りにUBIの話題作が色々登場する予定だが、個人的に期待度No2につけているのが『Farcry Primal』だ(1番はゴーストリコン)。
 過去幾度も繰り返された「こんなFPSがやりたい」的な談義の中で、「原始時代が舞台のFPS」という案はちょくちょく出されてきた。個人的に「美少女だらけの萌えFPS」よりも実現可能性は低いと思っていたが、何の因果かUBIという大手がそのネタを実行に移した。それも俺が大好きなFarCryシリーズのひとつとして。
 銃器が大好きな管理人としては複雑な気持ちもないではなかったが、前作『FarCry4』では弓矢でのステルスキルがすごく楽しかったし、それにゲーム自体が4で完成された感があったので、こういう型破りな路線変更もありだと今では思っている。

 そんなわけで、最新作『Primal』の前に『FarCry4』を振り返ってみようというのが今回のテーマだ。昨年書いて放置状態だったレビューがリサイクルできてちょうどいいやガハハ!

 例によってとても長くなったので、全部読んでられないという人は下記の項目別リンクから「まとめ」だけ読むといい。




・ゲームプレイは順当にパワーアップ
・トーンダウンした“狂気”とシナリオ
・女の子率は大幅にボリュームアップ
・まとめ――FarCry Primalへの期待



■ゲームプレイは順当にパワーアップ

 青い海と空、たくましい海賊のアニキ達でいっぱいの前作『FarCry3』から打って変わり、4の舞台はヒマラヤ山脈に近い架空の小国「キラット」。険しい山間部に集落や宗教関連の遺跡が点在する素朴な国……だったが、現在は独裁者パガン・ミン率いる王立軍と、反政府ゲリラ「ゴールデン・パス」が武力衝突を繰り返す内戦状態にある。


王立軍兵士の死体を前に談笑するゴールデン・パスの兵士(右)。キラット内戦の陰惨さを象徴するショット



 キラット生まれ・アメリカ育ちの主人公エイジェイ・ゲールは母を弔うためこの国を訪れたが、パガン・ミンの強烈な歓迎を受け、さらに亡き父がゴールデン・パスの創始者だったと知らされたことで、自身の運命がこの国に深く関わっていることを知る。
 成り行きも手伝ってゴールデン・パスの一員となったエイジェイは、パガンの魔手からキラットを取り戻す戦いに加わることになる。
 さぁ――戦争の時間だ。


 というわけで、狂気と暴力の島でのサバイバルから険峻に閉ざされた小国での革命戦争になったわけだが、やることはほとんど変わっていない。ベルタワー(電波塔)を解放して探索可能な地域を広げ、基地を攻略して拠点を確保し、動物を狩ったり植物を採集してアイテムを作る。その合間にサブクエストをこなし、道端で敵と出会ったら殺して死体を漁る。
 つまりいつものFarCryなので、3にハマれなかったという人はこのゲームを買うよりリアルでヒマラヤにでも行った方いい。
 だが、前作が楽しめた人にとっては順当に進化した拡張版としてお薦めできる。特に戦闘の機会が格段に増えているのは個人的に大いに賞賛したい。

 その要因のひとつは、紫色のマーカーでポップアップするランダムイベント(カルマイベント)の存在だ。のんびり車でドライブしていると、ゴールデン・パス(以下GP)と王立軍が小競り合いをしているところに出くわしたり、民間人が人質として連行されているのを目撃したり、あるいは猛獣に襲われているところを見かけたりする。さぁ、こんな時どうする? もちろん問題解決に一肌脱ぎますよね。主に暴力的な方法で。
 この他にも物資を運んでいる王立軍のトラックや、指令書を運んでいる兵士に出会うこともある。さぁどうする? もちろん奪えるものは奪いますよね。当然暴力的な方法で。

 これらのイベント以外でも王立軍の車両とはひんぱんに遭遇するので、そのたびに戦闘が起きる。この場合は報酬などは得られないが、炸裂弾頭付き矢やグレネードランチャーで車ごと吹き飛ばすのはとても気持ちいいので、むしろこっちが金払ってもいいとさえ思っている。
 うっかり民間人の車を爆破しちまうこともあるけど、誤射なので問題ない。カルマポイントはしっかりマイナスされてるけど関係ねぇ。ゲームに俺の戦闘教義をどうこう言われたくねぇな!

 まぁ時にはアクシデントも起きるものの、ゲームプレイにおける戦闘の大部分は王立軍兵士とのドンパチである。不意の遭遇から撃ち合いになることもあれば、車列を待ち伏せてRPG(ロケランの方)をブチ込んだり、敵拠点に忍び込んで首を掻き切ったりする。そういう“人間狩り”こそFarCryの醍醐味ではなかろうか、と管理人は思う。




これは雑兵だが、後半になると重装歩兵や獣を操るハンターなども登場する



 その人間狩りの魅力が凝縮されているのが敵拠点の解放(攻略)だ。拠点を発見したら遠距離から偵察し、敵をマーキング(タグ付け)して全容を把握し、どこからどうやって攻めるか考える。ステルスで殺るか? アサルトで逝くか? どっちを選んでも計画通り進むとは限らないが、不測の事態に臨機応変に対処するのも楽しみのひとつだ。もちろんリトライして美しいプレイをとことん追求してもいい。

 要するに3のそれと同じなのだが、スキルが色々と増えているぶん戦術の幅は広がっている。管理人はあまりステルスゲームが好きではないが、本作の拠点くらい小規模なステージならステルス殲滅に挑戦する気も起きる。一度も発見されることなくクリアできた時はガッツポーズしたくなるし、アサルトでも拠点内の銃座や迫撃砲を使って援軍もろとも壊滅させるのは最高に気分がいい。




小規模な拠点でも敵兵の数は実際以上に多く感じる



 このゲームには死体を一箇所に集める機能があるのかって?
 バカ言え全部俺が自分で運んだんだよ。拠点内に散らばった死体を一体一体「どっこらせ」と抱え上げ、よいしょよいしょと運んだわけですよ。
 もちろんこの作業には何のメリットもない。だが敵とはいえ命をかけて戦った者同士、亡骸を弔ってやりたい考えるのは自然なことだろう。このキラットの地に再び生まれ変われるようド派手な火葬で送ってやるのがキラット戦士の情けというものだ。








 こんな感じで。

 冗談はさておき、この「死体を移動させられる」てのも4から加わった要素だ。別に珍しいものではないが、これがあると死体を発見されるリスクを大きく軽減できるため、非常に助かる。特に管理人のようなステルスが上手くないタイプは大助かりだ。

 アサルト的な部分での変更要素を挙げると、拳銃などのサイドアームが乗り物の運転中でも使用出来たり、敵の乗り物に飛び移ってジャックできたりなどか。
 あと、GPの仲間を引き連れて共闘もできるのも愉快な追加要素ではある。ただ、これはあまり役に立たない。ある拠点を攻略中、敵が残り1人になったので仲間(こっちも1人)に任せてみたのだが、どっちもカバーばっかりしてて一向に決着がつかなかった。




戦えよ



 リアルといえばリアルだが…結局痺れを切らして管理人が手を下した。集団vs集団の派手な銃撃戦が起きるかと期待したんだが、少々期待外れだったな。
 まぁGPの連中はおいとくとして、アサルト方面もそれなりに充実しているのは確かだ。
 アクションゲームとしては前作よりも格段に遊びやすく、かつ飽きさせないようになっており、戦闘派のオープンワールドゲームとして満足度は非常に高い。このシリーズは2からUBIに制作が移り、3で劇的に進化したと評価されているが、この方向性は4でほぼ完成したといえそうだ。

 やっぱあれだな。個人的にはきらびやかな大都会よりオークだらけの辺境とか内戦中の小国とかの方が肌に合っている。アダルティなお店でおネーちゃんのダンスを鑑賞したり、ブスの愚痴を聞かされながらレッカー移動のバイトをしたりとかはできないが、殺していい敵がそこらじゅうにいて、武器も弾薬もたっぷりある。つまり人生に必要なものは全て足りてるって事だ。グフフ…やっぱりFPSは最高だぜ。



■トーンダウンした“狂気”とシナリオ

 一方で明らかにパワーダウンしたのがシナリオである。前作の物語は“狂気”にフォーカスしており、今作でも「ここは狂気の最高峰」というコピーで同じ路線であるかのように宣伝しているが、ぶっちゃけて言うと狂気成分はごく控えめである。

 前作の悪役である海賊の頭領バースや武器商人ホイトは、今作のパガン・ミンよりもずっと剥き出しの悪意に満ちていたし、サブキャラクターたちも心底の見えない胡散臭さが漂っていた。そんな連中に囲まれながら主人公は孤独な戦いを続けるわけだが、彼も一種の狂気に冒されていることが次第に明らかになる。そして最終的にはプレイヤー自身に「狂っているのはお前なんだよ」というメッセージが突きつけられる。――FarCry3はそういう物語だった。
(参考:
雑文199 FarCry3――この美しい島はもうスッカリ地獄です

 改めて考えると、あのゲームは得体の知れない不安感のようなものが常にゲーム全体を覆っていた。
 美しい自然と凶悪な海賊という異様なコントラストもそうだし、意味深な文字が躍るローディング画面や、メニュー画面の鏡写しの表現などもFarCry3のテーマを暗示していた。これらが(おそらくは無意識レベルで)居心地の悪さ、不安さをプレイヤーに与えていたと思われる。




アイテムに限らずメニュー画面で表示されるものは全てこんな感じ。「鏡写し」は3のシナリオにおけるキーワードともいえる




「Insanity(狂気)」の文字が不気味に踊るロード画面




 狂気というテーマがストーリーはもちろん細部のデザインにまで反映されていたあたり、(好き嫌いは別にして)作品として高いレベルで完成されていたと改めて感じる。

 これに比べると本作はどこかボンヤリした出来である。
 まずパガンの出番が少なく、その暴虐っぷりを肌身で感じることがないため「パガンを倒す」という目的の切実さが薄い。前作では重しを付けられて海に沈められるなど、洒落にならない窮地に陥ったことが一度や二度ではないが、そういう危機感も足りない。
 サブキャラクターを含めた登場人物たちに「こいつは俺をハメようとしているんじゃ?」という疑念が湧くことはないし、ましてや「狂っているのは俺なのか?」と自問自答することもない。

 総じて主人公は一歩引いたスタンスであり、GPを率いる2人のリーダー「サバル」と「アミータ」のどちらに手を貸すかという部分がシナリオの基調になっている。
 革命戦争への介入というテーマは面白いし、実際「信念と権力が人間をどう変えるか」という重いテーマも描かれているのだが、主人公がどこまでも第三者的なスタンスを崩さないせいで淡白な印象になっている。

 しかし、主人公エイジェイの物語は前作に負けないほどスリリングなものになり得たはずなのだ。
 彼は母を弔う目的でキラットを訪れるが、そこで自分が思っていた以上にこの国と因縁があることを知る。暴君パガン・ミンはエイジェイの母を知っており、その息子である彼を仲間として引き入れようとする。一方、顔も知らぬ父はパガン打倒を掲げるGPの創始者で、サバルをはじめとする兵士たちは彼を英雄の息子として歓迎する。この導入部だけで裏に複雑な事情があることが想像できるし、不鮮明な部分を解き明かすことでシナリオにも牽引力が生まれたはずだ。
 なぜ母は生前キラットや父のことを語らなかったのか? 謎に包まれている父の最期はどのようなものだったのか? パガンと母の関係は? 母が連れて行ってほしいと言い残した「ラクシュマナ」とは?
 これらの謎はいずれも劇中で明らかになるが、どこまでいってもメインシナリオの添え物程度の扱いである。正直、こっちをメインにした方がよっぽど面白くなったのではないかと思わずにはいられない。

 ついでに言うと、本作の特色のひとつである「シャングリラ」ミッションの扱いも首をかしげたくなる。これはキラットの伝説に語られる戦士カリナグの冒険を追体験するものだが、幻想的なビジュアルなど並々ならぬコストを注ぎ込んでいるにも関わらず、メインシナリオとはほとんど関連がない。ぶっちゃけ無くてもストーリー的には問題ない。
 管理人はシャングリラの雰囲気が嫌いではないが、本筋のストーリーがアレなのにオマケにそんな尺を割いてどうすんだという気持ちも同時にある。

 他所の感想を見ても決して好評とはいえないシャングリラ編だが、今ならむしろ『FarCry Primal』の予習として価値があるかもしれん。お供のホワイトタイガーのフサフサっぷりも一見の価値はある。




毛皮に顔うずめたいね




■女の子率は大幅にボリュームアップ

 UBIはもともとフランスの会社であるためか、女性キャラクターも洋ゲー的なゴツさがなく、普通に綺麗なことが多い。
 本作はカナダや中国、ロシアなど複数のスタジオによる共同制作のようだが、女性キャラクターの綺麗さは前作に劣らない。さらにGPには女性兵士も多いため、前作とは段違いの華やかさである。



ゴールデン・パスの女性兵士(一例)



(女性キャラクターが綺麗とは言ったが女兵士が綺麗とは言っていない)



 前作の味方であるラクヤット(島の原住民)がガチムチな男衆ばかりだったのを思えば、上記の女兵士でも十分に潤いになるといえばなる。ただし、彼女たちの雄度はラクヤットよりはるかに高い。FarCry4はGPも王立軍も戦闘中にいろいろしゃべっているのだが、女性兵士の台詞は「生きたまま皮を剥いでやる!」とか「死ぬ前にたっぷり苦しめてやるからねェ!」とか「綺麗な肌をしてるねえ。私が剥いでやるよ!」とか、失禁しそうなレベルで怖いものが多い。ていうか女性兵士のインパクトが強すぎて男性兵士の台詞を全く覚えてねぇ。
 それでいて戦闘が終わると「私が殺した相手も、誰かの夫や息子なのよね…恐ろしいことだわ」などと賢者タイムに突入したりするし、この二面性も怖い。

 そういえば、キラットのモデルとなったネパールは精悍で知られるグルカ兵を生んだ土地である。それを思えばこの勇猛ぶりも分からないではない。




笑顔がまぶしすぎて怖い



 まぁ女性兵士は確かにあれだが、ちゃんと普通に綺麗どころもいる。




 左の仏頂面のおネーちゃんはGPのリーダーのひとりアミータ、右はキラットの宗教的シンボルである少女バドラ。
 アミータは当初はエイジェイに対して非友好的なので第一印象はよろしくないが、彼女の依頼をこなすに従って態度も軟化してくる。バドラも基本的にいい子だ。

 ただ、FarCry4の物語はかなり――見方によっては3よりも残酷なので、甘いロマンスとかは最初から期待しないほうがいい。



■まとめ――FarCry Primalへの期待

 そんなわけで良い点も悪い点もあるFarCry4だが、総括としては「戦争したい人にお勧めのオープンワールドアクション」としてオススメできる。
 3と比べて対戦がピンと来ない、4人Coopモードがないなど総合的には見劣りしないでもないが、キャンペーンにおける遊びの幅、ストレスフリーな作りなどは圧倒的に上回っている。アクションのメカニックでいえばこの4が現時点でFarCryの完成形と言っても過言ではないだろう。だからこそがらりと様相を変えた新作『FarCry Primal』に期待が高まる。

 4の戦闘では弓矢を使ったステルスプレイが楽しかったし、それを受け継いでいる点は安定した面白さを期待していいだろう。アサルトライフルや軽機関銃をブッ放すようなド派手な戦闘は期待できないが、そのあたりを新たな要素で埋めてくれることを願おう。

 思えばFarCryシリーズは、狂気のほか暴力や恐怖、残忍さなど人間の原始的な部分を暴き出すことを目的としていたように思う。紛争地帯のアフリカ、絶海の孤島、内戦中の小国などを舞台にしていたのも、そうした土地の方が文明や文化の虚飾を剥ぎ取った人間の生の姿が現れやすいからだろう。

 Primalの舞台はおよそ1万年前、人間がいまだ虚飾を纏うことを知らない時代だ。より剥き出しになった舞台でどのようなアクションが体験でき、どのような物語が紡がれるのか、今から楽しみでならない。



追記:
 キャラ的な魅力では3の方が本作より上だったと思うが、それでも大好きなキャラはいる。
 管理人が本作で一番好きなのは武器商人の「ロンギヌス」。キリスト教の牧師にして武器商人という変わり種で、申命記、詩篇、ヨハネの黙示録といった聖書の言葉を引用しながらクエストを依頼してくる。




 彼の依頼は一貫して密輸業者(彼は『迷える羊』と表現している)からダイヤの原石を強奪するというものだが、これは彼の理屈によるとビジネスでありつつ懺悔でもあるらしい。このへんの理屈はさっぱり分からないが、彼が口にすると聖書の言葉がことごとく禍々しいものに聞こえる。


「我々はキリストの再臨を見た。エイジェイ、正義の遂行には銃が必要だ。全ての銃は聖書。全ての銃弾は説教」

「『誉むべきかな我が主。主は救いのために私の手を、私の指を鍛えられる』。詩篇だ。意味は、兵士は最善を尽くせ、だ」

「レビ記第17章11節。『命として贖いをするのは血である』。これらは私の、かつての悪行の名残だ。ひとつずつが罪であり、私も多くの罪を犯した」

「『たとえ死の影の谷を歩くことがあっても、私は災いを恐れない。あなたが共にいてくださるから』。詩篇23章4節。また会えて何よりだエイジェイ。主の御業を成しに来たか?」


 彼はかつてアフリカで武装集団の頭目をやっていたが、頭部に重傷を負ったのをきっかけに人生観が一変、洗礼を受けて牧師になったという。
 キリスト教の教義と武器商人という仕事が彼の中でどのように結びついているのかは理解しがたいが、こういう独自のスタイルを持つキャラは嫌いではない。というか、むしろ好きだね。彼の全台詞をビデオクリップに保存した上でテキストに書き起こしたくらいには好きだ。特に「全ての銃は聖書。全ての銃弾は説教」は管理人の個人的名言録にランクインしている。

 Primalでもきっとイイ感じの悪党が出てくるに違いないと思うので、そのへんにも期待している。




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