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17.03/11 その252
Horizon Zero Dawn――機械仕掛けのケダモノと私






 栄華を誇った文明が滅んで1000年。再び緑に包まれた大地には機械の生物が跋扈し、万物の霊長の座を明け渡した人類は、原始的な狩猟生活を営みつつ細々と暮らしている――。
 そんなユニークな世界観で耳目を集めていたオープンワールドアクション『Horizon Zero Dawn』について書こうと思う。

 最初の予定では「四足歩行ロボットの目指す先」という話から始まり、「日本人はなぜ美少女アンドロイドを求めるのか」の問題提起に移り、そこから強引に「けものフレンズ」につなぎ、「Horizonとけものフレンズって似てるよね? そう考えるとあの機械獣どももケモミミ系美少女アンドロイドに見えてきたぞヒャッハーたーのしー!とまとめるつもりだったが、迂遠すぎるのでやめた。

 そもそも俺はそこまで美少女とイチャコラしたいわけじゃないしな…。いや、したくないわけじゃないけど、ゲームに求めているのはもっと原始的な楽しみなのだ。具体的にはブッ殺したりブッ壊したりブッ飛ばしたりする諸々の闘争手段。オープンワールドアクションというジャンルはそれらの要素とよく馴染むと管理人は考えている。
 人によっては「生活感あるリアルな世界」とか「目を見張るほど美しい景観」に価値を見出すのだろうが、個人的には「どんな敵と、どんな場所で、どう戦うか」が一番の興味であり、それ以外はすべて添え物に過ぎない。

 その意味で『Horizon Zero Dawn』は敵と戦うのがとても楽しい、管理人向けのオープンワールドアクションだった。そんなわけで、真面目にHorizonの感想を述べる。


●狩りのとき
 本作の主な敵である機械獣――劇中では単に「機械」と呼ばれる――は、Shadow of Mordorのオーク連中と同じく本作を象徴する存在であり、世界観そのものといえる。特に日本では「ゾイド」を想起させることもあって、洋ゲー好き以外の耳目も引いた。



 管理人的にはそれほど心ときめくようなものではなかったが、実際にプレイして戦闘を繰り返すうちに愛着がわき、今ではフレンズと呼んでいいとさえ思っている。


ウォッチャーちゃん

最初に出会う機械生物で、見張りが得意なフレンズ。パッチリおめめが可愛い。いや可愛くない。ここに矢を射込めば一撃で死ぬ。





グレイザーちゃん

鹿を思わせるフォルムの機械生物。地面を角で掘り返している(?)のが可愛い。いや可愛くない。ケツに付いているキャニスター(燃料容器)を火矢で射れば大爆発して死ぬ。面白い。




スクラッパーちゃん

ハイエナ的な機械生物で、死体掃除が得意なフレンズ。ローラー粉砕機のような顎で仲間の死骸をゴリゴリし、本来プレイヤーが得るべき資源を横取りしてしまう。ケツのバッテリーユニットを電撃の矢で射れば周囲一帯に放電して死ぬ。面白い。




 彼らは例外なく頑丈で、多くは獰猛だ。瞬時に距離を詰めて超痛い一撃を見舞ってきたり、離れた位置から飛び道具を撃ってきたりする。一方でこっちの武器は基本的に槍と弓で、武器のジャンル的には『Farcry:Primal』と大差ない。
 現代科学を超越した機械生物に石器時代の武器で挑む――と書くとマゾ向けのネタゲーのように感じるが、もちろんそんなことはない。上にも書いてあるが、機械獣たちは火矢で撃てば大爆発を起こすキャニスターなどの弱点を抱えているし、武器とする角や火器、身を守る装甲版も破壊して戦力を削ぐことができる。
 油断すればあっさり殺られるが、上手く弱点を突けば鮮やかにブッ壊せる、とてもメリハリのきいた敵なのだ。このハイリスク&ハイリターンな駆け引きがHorizonにおける戦闘――いや、“狩り”の面白さといえる。

 狩りの名にふさわしく、多彩な戦法が取れるのも特徴である。忍び寄ってのステルスキルやワイヤートラップでの待ち伏せ攻撃もあるし、正面からの戦闘でも敵を縛り付けるロープキャスターや状態異常効果のある爆弾などを活用し、有利に戦うことができる。
 もちろん最初から上手くはいかないが、試行錯誤を重ねるうちに攻略法も分かってくるし、スキルや武器が強化されれば戦い方にも幅が出る。最初は「ソウトゥース同時2体とか無理。絶対無理」って感じだったのに、今では余裕をもって対処できるようになった。まぁ俺様は狩りが得意なフレンズだから、ちょっと慣れればこんなもんよ(難易度NORMALでそんなでかい口叩けるなんてすごーい!)。


●結論:戦いたい人向けの戦闘派オープンワールド
 本作は「巨大な獣を狩る」というシチュエーションのせいか、カプコンの『モンスターハンター』が引き合いに出されることが多い。だがゲームとして一番近いのは『Farcry:Primal』だろう。原始的な世界で弓と槍で獣を狩ったり、時にはフレン…仲間にできるという点でも共通している。
 単純に優劣を付けることはしないが、Horizonの方が圧倒的に「ゲーム的」だとは言える。Primalは登場人物たちの言葉を言語学的なアプローチで新たに創り出したりと「1万年前の世界」の構築に力を注いでいたが、Horizonは「機械獣を狩るアクション」のアイデアが先にあり、そこから逆算してあの世界を構築したのではないか…とすら思わされる。これはあくまでも管理人の想像だが、そのくらいアクションの核がしっかりしていると感じる。
 一方で採集やクラフト、スキルアップの要素はFarcryシリーズと似たり寄ったりで、本作ならではといった独自性はない。だがそれが足を引っ張っているわけではないし、全体としては秀作と言って差し支えないだろう。

 そんなわけで本作は、緊張感と爽快感を備えた“狩り”を求める人にはお勧めできる。今回はあまり触れなかったが、機械獣を仲間にできる「オーバーライド」も人によっては魅力的な要素だろう。管理人はあんまり使ってないけどな…。アイツら基本的に可愛くないし。
 オマエさっき愛着わいたって言ってたろって? いやそれは「ブッ壊す対象」としての愛着だから。戦って破壊するのは楽しいけど、仲間にして愛でたいとは思わんなぁ。

 それはさておき、本作は色々と魅力いっぱいのオープンワールドアクションであることは疑いない。フォトモードも用意されているので、この世界観、特に機械獣のデザインにときめいた人は写真撮影だけで相当楽しめるだろう。文明が崩壊した謎に迫るストーリーも今後面白くなりそうだし、今年1、2を争う傑作なのは間違いない。


●本作における女性の立ち位置
 ところで、ネットでは主人公アーロイがブス呼ばわりされているのをしばしば見る。あの整った顔立ちのどこを指して「ブス」というのかよく分からないが、いわゆる男受けのよさそうな「美少女」でないのは確かだろう。



角度によってはすごいイケメンに



 太く一直線に通った眉や、ちょっとリーゼントっぽくも見える髪型は少年っぽさを感じさせる。最大限に褒めるなら「凛々しい少年」ってところか。初期のコンセプトアートではもっとガーリッシュなデザイン案もあったようだが…。



 これなどはストレートに可愛いだけに惜しいと思うが、世界観的に「可愛い女の子」的な造形は避けたのだろう。実際アーロイは口調だけでなく劇中のアクション動作、やられボイスに至るまで少年的あるいは中性的な感じであり、従来的な意味での“女性らしさ”は意識的に廃除しているように感じられる。

 このあたり、ゲームにおける女性キャラの立ち位置の変化を感じさせられる。以前も紹介したが「ゲーム市場における女性主人公の居場所」(Chokepoint)というコラムを読むと、4年前に比べて「タフな女性主人公」が広く受け入れられつつあるのがよく分かる。
 当時の海外ゲーム業界では「女性キャラが前面に出たパッケージは受けが悪い」と思われており、『Last of US』のキーパーソンであるエリーがカバーアートから外されそうになったり、『Bioshock:Infinite』では実際にエリザベスが外されたりと不遇なものだったが、Horizonではれっきとした女主人公が主役を務めている。それも男好きのするセクシーな女性(ララ・クロフトのような)ではなく、もっと自然体な女性が、である。
 本作のセールスも好調なようだし、上記のコラム冒頭にある「ゲーマーというのは女性主人公が嫌いだろう? 少なくとも、マーケティング理論ではそれが一般的な見方だ」という言葉も過去のものになったと言えるだろう。

 カッコつけずに管理人の本音をいえば、女性キャラはグラマラスな美女の方がありがたいし、もっと言えば筋肉モリモリの男性主人公の方が感情移入できる。そういう「男の子ってこういうのが好きなんでしょ?」的なゲーム文化も廃れてほしくないが、それとは違うアプローチの作品が登場することで、ゲーム業界にもたらすプラス効果もきっと大きいはずだ。


 一方で和ゲーの女性像は相も変わらずおっぱい! おしり! ふともも! ってノリだが、まぁ日本はこれでいいんじゃないでしょうか。洋ゲーとは違う方向で面白いのが作れるんならそれに越したことはないよね。
 その手のゲームの最右翼である「閃乱カグラ」シリーズの最新作――スプラトゥーンならぬスケベトゥーンと呼ばれている『閃乱カグラ Peach Beach Splash』だが…アレってどうなんだろうね? 「水鉄砲で撃ち合って服が透ける」というのを売りにしているが、それってそんなにエロいか?




 これまでの「ぷるぷるフィニッシュ」みたいな暴挙の数々と比較すると、ずいぶん健全な方向にシフトしたなという感じだ。あれか、PS4で出た『Estival Versus』もSteamで配信されるというし、海外市場を見据えてHENTAIは加減するってことなのかね。
 もういっそのことゴア描写も盛り込んでバイオレンスアクションにすればいいんじゃないでしょうか。もちろん美少女が肉片になって飛び散るのは見たくないので、登場人物全員Gears of Warみたいなタフガイに変える方向で。Gowも後期には女戦士が多数登場して雄臭さが薄れたが、マッチョ野郎の血みどろバトルというジャンルは管理人含め支持層は厚い。海外市場で女性キャラの躍進が目立つ今こそ、筋肉野郎だらけの戦場が求められているともいえる。よし、次回作は『殲乱禍愚羅 Blood Dead Destroid』でいこう。モヒカンキャラ多めで頼む。あ、雪泉だけはそのままでいいから。






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