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16.03/18 その254
今度はこれをオープンワールドにしてくれ(前編)





 2016年は近年稀に見るFPSの当たり年だったが、2017年はオープンワールドの当たり年になるかもしれない。すでに『Horizon Zero Dawn』と『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』という名作といって差し支えないゲームが登場しているし、『Ghostrecon:Wildlands』もCoopに限って言えば悪くない評価を得ている様子。そして夏には全世界のオーク好きとバイオレンスアクション好きが待ち望む『Shadow of War』が控えている。あと1つ2つ良作がリリースされれば十分に当たり年といえるだろう。

 それにしても、オープンワールドものが増えたなぁと今更ながら思う。かつては洋ゲーの専売特許のようなものだったが、和ゲーでもメタルギアやFF、ゼルダといった大作シリーズもオープンワールドに舵を切った。Ghostreconもそうだが、従来型のアクションゲームやRPGをオープンワールド化するケースも増えており、このジャンルの需要が未だ衰えていないことがうかがえる。

 そんなわけで今回は「このゲームをオープンワールド化したらきっと面白いぞ!」というものを挙げてみたい。
 オープンワールドものの魅力とは、生き生きとした世界で多様な選択ができる点にある。管理人の興味はもっぱら戦闘部分に集中しているが、その点でもランダム性の高さがバリエーションに富んだアクションを生む下地がある。そうした可能性を秘めている――と管理人が思うゲームをいくつか選んでみた。


 ↓項目別リンク

 ・平安京エイリアン
 ・レッドアリーマー 魔界村外伝
 ・テイルコンチェルト




平安京エイリアン(1979)

 

・生活空間がそのまま戦場になる、切れ目のないオープンワールド

 平安京にエイリアンが襲来! スコップで穴掘ってヤツらを埋めろ! という奇天烈もいい加減にしろというシチュエーションが特色の古典アクションゲーム。『Horizon Zero Dawan』は弓と槍で機械生物に立ち向かうが、スコップ一本でエイリアン退治を命じられた本作主人公に比べれば大分マシである。
 ビデオゲーム黎明期の傑作として幾度もリメイクされており、その意味では伝説的なゲームでもある。



右はゲームボーイへの移植版(1990)


 このゲームのどこにオープンワールドとしての可能性があるかといえば、「平安京」という舞台である。商人や職人、貴族たちが行きかう都大路を再現できればアサシンクリードも裸足で逃げ出すようなヒストリカル・アクションになりうるだろう。都人に交じって歩いているだけでも楽しいという人もきっといるに違いない。
 都市ひとつをまるごとオープンワールド化という点ではGTAシリーズと同じだが、無法者がアクセル全開でヤンチャしまくるあちらと違い、本作の主人公は検非違使という設定なので、町のお巡りさんのように人々の悩みを聞いたりするサブクエストも期待できる。

「泥棒が盗んだ品をこのへんに埋めたらしい。探すの手伝って」
→それらしい場所を掘ってみよう!

「魚を仕入れすぎて大変! このままじゃ腐っちゃう」
→穴を掘って埋めてあげよう!

「恋文を間違えて上司に送っちゃった。穴があったら入りたい…」
→穴を掘って埋めてあげよう!

「わしの名は空海。これから最後の行に入るところじゃ…」
→穴を掘って埋めてあげよう!


 弘法大師こと空海(774〜835)は土中入定し即身仏になった、という説もあるようです。そんなこんなでスコップひとつでクエストをこなしていくわけですよ。牧歌的でほのぼのしますね。だが、このゲームの真骨頂はもちろんエイリアンの襲来とその撃退である。横幅が通りの広さと同じくらいの巨大エイリアンを、穴を掘って落とし生き埋めにするわけだ。冷静に考えると慄然となる体格差だが、都を守る熱い魂があればなんとかなる。

 一般的なオープンワールドものだと、人々の住まう村や集落は外のフィールドと隔てられた安全地帯になっていることが多い。だが平安京エイリアンでは住民たちの住まう村がそのまま戦場になる。これは緊張感ありますよ。
 さっきまでアイテムを買っていた露店の前に穴を掘ってエイリアンを埋めたりするわけで、場合によっては住民の苦情とも戦わねばならないだろう。まぁ戦闘ももめ事も全部スコップで片付けるのが平安京イズムなので、うるさい奴がいたらこっそり裏通りに埋めてしまってもいいかもしれない。
 そんなクライムアクション的な側面も持つ「オープンワールド平安京エイリアン」、どこか作ってくれませんかね。



レッドアリーマー 魔界村外伝(1990)

 

・張り付きとホバリングで縦横に魔界を駆け抜けろ

 『魔界村』シリーズの名物的な敵キャラ「レッドアリーマー」を主役に抜擢したアクションRPG。後にファミコンやスーパーファミコンでも続編が出た。
 管理人がプレイしたのは初代1作のみだが、すごい面白かったよ。凶悪な魔物、それも過去にさんざん苦杯をなめさせられた敵が主役というのは燃えるものがあったし、何より魔物ならではの特性を活かしたアクション――垂直な壁をひょいひょい登ったり、飛行(ホバリング)で難所を通り抜けたりと、従来の魔界村にはない面白さがあった。



魔界の住民との会話やフィールドマップなど、意外なほどちゃんとRPGしている


 まぁ今のゲームは人間でも空くらい普通に飛ぶが、「立体的な広がりをもつオープンワールド」という方向で考えると面白いゲームになるのではないだろうか。

 思えば『Batman:Arkham City』以降の同シリーズはそれに近い。グラップルガンで高所に登り、グライド(滑空)で空の散歩をしてみたりと、移動そのものがとても楽しかった。つまりバットマンは魔物レッドアリーマーにも同種の可能性があるといえる。
 また『魔界村』の系譜に連なるコミカルな魔界観も大きなセールスポイントになる。最近話題を集めている地獄放浪ゲー『Agony』や、ダンテの「神曲」をゲーム化した地獄めぐりゲー『Dante's Inferno』のようなハードコア路線もいいが、良い意味で漫画的なあのビジュアルは世界的にもファンは多いと思う。

 現在カプコンの魔界ゲーといえばデビルメイクライを思い出す人も多そうだが、オープンワールドアクションとしてはレッドアリーマーの方に豊かな可能性があることが分かってもらえたと思う。
 問題は…あちらと違って綺麗どころのおネーちゃんを用意しづらい点だな…。といっても最新作の『DmC』では「サキュバス」と「リリス」という、ヴァンパイアシリーズのモリガン&リリスファンに全力で喧嘩を売っているような女悪魔もいたし、そういう甘っちょろい要素を求めると負けな気もする。



サキュバス(左)とリリス。リリスは悲劇のヒロイン(大嘘)


 まぁあれだ…『超魔界村』ではアーサーが魔法のトラップで女の子になったりしたし、レッドアリーマーさんにもそのノリで美少女に変身してもらえばいいかな。デミトリさん出番です!



エプロンドレスのアーサーさん。可愛い




テイルコンチェルト(1998)

 

・犬のおまわりさんとネコ空賊のわくわくオープンワールド

 PSでリリースされた3Dアクション。犬ヒトと猫ヒトが暮らす浮遊大陸「プレーリー王国」を舞台に、警察官のワッフルと犯罪集団「黒猫団」のドタバタ劇が展開される。
 アクションの要はワッフルの駆る「ポリスロボ」で、これで子猫(黒猫団の兵隊)を捕まえたり、敵の爆弾をキャッチして投げ返したりする。敵を泡に閉じ込める「バブル弾」という飛び道具も備えているが、連装機関砲やマイクロミサイルといった殺傷兵器はない。見てのとおり、一貫してほんわかした雰囲気のゲームである。



犯罪集団(ネコ少女)の魔の手から王国を救え!


 たまにはこういうメルヘンチックなゲームもいいよね。悪いやつはいるけれど「あ、こいつは死ななきゃいけないな。それもできるだけ惨たらしく」というレベルの悪党はいない。
 可愛い女の子はいるけれど、薄い本が求められるような性的な可愛さではない……と思ったけど「テイルコンチェルト エロ」で画像検索したらいっぱい出てきたので、これについては考えを改めねばなるまい。

 何の話だっけ。そうそう、テイルコンチェルトのオープンワールド的な可能性ね。これはもう「メルヘンチックな世界」に尽きる。オープンワールドに限らず近年大作とされるゲームの多くはフォトリアリスティックなビジュアルで統一されているが、そろそろこうした目に優しいビジュアルが求められている気がする。
 また浮遊大陸(実際には浮遊群島)という舞台にも可能性を感じる。実際のゲームでもあちこち探索するパートがあったが、オープンワールド化することでその魅力をさらに引き出せるのではないだろうか。

 警官を主人公にしたオープンワールドものといえば『Sleeping Dogs:香港秘密警察』…の前身である『True Crime』が思い浮かぶが、あちらは悪党をブチのめして逮捕するのが主眼だった。そういう「俺が法だ。文句あんのか?」的なゲームプレイは大好きだし、もっといえば悪徳警官のロールプレイをするゲームもやってみたいが、テイルコンチェルトのような牧歌的なゲームももっと増えていいと思う。ヒット作とはいえなかった本作だが、このほんわかした世界は今の疲れた時代にこそ求められているといえる。

 話は変わるが、ゲーム中で子猫を捕まえるとポリスロボの後部にある装置に吸い込まれるようになっている。ひょっとしてこれがロボの燃料になっているのではという指摘は発売当時からあった。
 あの装置で子猫が分解されてエネルギーに変換されていると考えると、Sleeping Dogsにおけるラスボスへのトドメ(ヒント:氷いちご)を彷彿とさせるエグさであり、実にダークかつバイオレンス全開のゲームといえなくもな…いえない? そうね。テイルコンチェルトはそんな血みどろゲーじゃないよね。うんうん分かってる。テイルコンチェルトはやんちゃで可愛い子猫どもを可愛がるゲームです。みんな覚えておこうね。



Sleeng Dogs。突っ込まれている機械は砕氷機



 ちなみに本作は、発売から17年が経過した2015年に新たに設定資料集が刊行された。この点からも根強いファンがいる、確かな魅力のある作品であることが分かろうというものだ。
 それを記念して制作会社CC2の社長とプロデューサーにインタビューが行われたが、これがなかなか興味深かった。

『テイルコンチェルト』設定資料集発売記念インタビュー!いま明かされる三つの十字架、そして松山洋の本音とは(INSIDE)

 企画が立ち上がったきっかけは一枚のラフイラストだったとか、後継作『Solatorobo(ソラトロボ) それからCODAへ』のつながりなど裏話が満載だが、特に「テイルコンチェルトが思ったより売れなかった原因」についてのくだりが面白い。



松山氏:我々も、敗因の研究は続けてきたんですよ。弱点を克服すれば次の一手が打てるだろうと。そのために企画を持ち込んだり意見を聞いてきたんですけども、「十字架が3つある」と言われまして。

──3つの十字架? それはなんでしょうか。

松山氏:ひとつは「ケモノキャラクター」。そもそも人を選びすぎると。「みんな、松山さんほどケモノ好きじゃないから」って(笑)。それがまず意外だったんですけど、言われて初めて気付きました。気持ちとしては「嘘だろ、みんな好きやろ?」って感じですけど(笑)。



 ケモノキャラは一般性癖ではありません。みんな覚えておこうね(誰も性癖の話はしていない)。
 そんなわけで『テイルコンチェルト』は豊かな可能性を秘めていることが分かってもらえたと思う。CC2にはジョジョで儲けた金を全部ブッ込んでテイルコンチェルトの続編を作ってほしいね。


 他にもいくつか「これをオープンワールド化してほしい」というゲームがあるが、長くなるので次にまわそう。まだま金脈は眠っていると思うよ。




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